・・・ここで私のいう労働者とは、社会問題の最も重要な位置を占むべき労働問題の対象たる第四階級と称せられる人々をいうのだ。第四階級のうち特に都会に生活している人々をいうのだ。 もし私の考えるところが間違っていなかったら、私が前述した意味の労働者・・・ 有島武郎 「宣言一つ」
・・・けだしその論理は我々の父兄の手にある間はその国家を保護し、発達さする最重要の武器なるにかかわらず、一度我々青年の手に移されるに及んで、まったく何人も予期しなかった結論に到達しているのである。「国家は強大でなければならぬ。我々はそれを阻害すべ・・・ 石川啄木 「時代閉塞の現状」
・・・その割合には名前が余り知られていないが、一生の事業と活動とは維新の商業史の重要な頁を作っておる。今では堀田伯の住邸となってる本所の故宅の庭園は伊藤の全盛時代に椿岳が設計して金に飽かして作ったもので、一木一石が八兵衛兄弟の豪奢と才気の名残を留・・・ 内田魯庵 「淡島椿岳」
・・・かつて二葉亭の一身上の或る重要な問題について坪内博士と談合した時、二葉亭の心の中は多分こうであろうと推断して博士に話した。すると間もなく二葉亭は博士を訪うて、果して私が憶測した通りな心持を打明けて相談したので、「内田君も今来て君の心持は多分・・・ 内田魯庵 「二葉亭余談」
・・・また、題材の如何が、子供達に与える興味に関係することも勿論であるが、より重要なものは、語る人の態度にあろうと思います。 いかなる話が語られるにせよ、語る人の態度が真面目でなかったなら、子供の心を確実に掴むことはできません。従って、語る人・・・ 小川未明 「童話を書く時の心」
・・・ 然らば事件という事はそんなに重要なことか。重要なら、何のために重きをなすのか。それが、畢竟作品に変化を与え、面白く読ませるというに過ぎないなら、そこに疑いがあるであろう。 作品は、面白く読ませるということを、一条件としなければなら・・・ 小川未明 「何を作品に求むべきか」
・・・死ということは甚だ重要だから、何か書いて残したい気持はよく判るし、せめてそれによってやがて迫る鉛のような死の沈黙の底を覗く寂しさを、まぎらわしたいという気持も判るのだが、しかし、私は「重要なことは最も簡潔に描くべし」という一種の技巧論を信じ・・・ 織田作之助 「中毒」
・・・ その意味では、その目撃者はかなり重要な人物だと、云ってもよいから、まずその姓名を明らかにして置こう。 小沢十吉……二十九歳。 その夜、小沢は土砂降りの雨にびっしょり濡れながら、外語学校の前の焼跡の道を東へ真直ぐ、細工谷町の方へ・・・ 織田作之助 「夜光虫」
・・・ 二 倫理学の入門 倫理学の祖といわれるソクラテス以来最近のシェーラーやハルトマンらの現象学派の倫理学にいたるまで、人間の内面生活ならびに社会生活の一切の道徳的に重要な諸問題が、それを一貫する原理の探究を目ざしてとり・・・ 倉田百三 「学生と教養」
・・・青春にとってこれは重要なことであって触れずにおれないのだ。誰しも青春の長いことを望まぬものはあるまい。その長さは人生の幸福をはかる重要な尺度である。これは青春のすぎ去った者のしみじみ思うところである。そして青春の幸福を長く保とうとねがうなら・・・ 倉田百三 「学生と生活」
出典:青空文庫