・・・ 性的アドーレーションは人的アドーレーションなしに不可能であるから。 野上彌生子の作品で母の愛が恋愛的に描かれ、母の息子に対する恋愛がはばかりなく描かれていることは、実にこの間の消息をかたって興味つきぬものがあるのである。いかなる封・・・ 宮本百合子 「婦人作家は何故道徳家か? そして何故男の美が描けぬか?」
・・・そのために平塚さんたちの青鞜社の運動も或る種類の僅かな人、たとえば野上彌生子さんのような人は後には青鞜社から離れたけれどもあの時代に出た人です。青鞜社の全体の方から申しますと、はっきりした社会的基礎をその人達が持っておりませんでしたから、雷・・・ 宮本百合子 「婦人の創造力」
・・・それ以来、英米訳が出版され日本訳は既に十数年前野上豊一郎氏によって発表されている。 余り多くの才能と余り短い命とをもったマリアは非常に早熟であった。彼女は十三になったとき、もう「私は十三である。こんなに時間を無駄にしていて、これから先ど・・・ 宮本百合子 「マリア・バシュキルツェフの日記」
・・・ 野上彌生子氏の「若い息子」における母の感情を、允子の場合と比べて、感じるものがあるのは私一人ではないだろうと思う。「若い息子」の母親は、やはり高等生の母である。やはり、生活に不安はない家庭の母である。息子がひっぱられたりすることは元よ・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
・・・ ――○―― 野上彌生子の進歩性の中には多分に「『意欲の合則性』の実現の程度に応じて、人間は地球の創造者となりその改造者となる より全般的になればなるほど合理的社会生活が営まれる」というアドラー流の考えがある。p.・・・ 宮本百合子 「「若い息子」について」
・・・木曜日の晩の集まりは、そのころにはもう六、七年も続いて来ているので、初めとはよほど顔ぶれが違って来ていたであろうが、その晩集まったのは、古顔では森田草平、鈴木三重吉、小宮豊隆、野上豊一郎、松根東洋城など、若い方では赤木桁平、内田百間、林原耕・・・ 和辻哲郎 「漱石の人物」
野上豊一郎君の『能面』がいよいよ出版されることになった。昨年『面とペルソナ』を書いた時にはすぐにも刊行されそうな話だったので、「近刊」として付記しておいたが、それからもう一年以上になる。網目版の校正にそれほど念を入れていたのである。そ・・・ 和辻哲郎 「能面の様式」
・・・能面についての具体的なことは近刊野上豊一郎氏編の『能面』を見られたい。氏は能面の理解と研究において現代の第一人者である。 和辻哲郎 「面とペルソナ」
出典:青空文庫