・・・そして日曜の朝の礼拝にも、金曜日の夜の祈祷会にも必ず出席して、日曜の夜の説教まで聞きに行くのでした。 他の下宿に移ってまもなくの事でありました、木村が、今夜、説教を聞きに行かないかと言います。それもたって勧めるではなく、彼の癖として少し・・・ 国木田独歩 「あの時分」
・・・即ち月曜日には孟子、火曜日には詩経、水曜日には大学、木曜日には文章規範、金曜日には何、土曜日には何というようになって居るので、易いものは学力の低い人達の為、むずかしいものは学力の発達して居るもののためという理窟なのです。それで順番に各自が宛・・・ 幸田露伴 「学生時代」
・・・ 金曜日 総理大臣が乱暴な若者に狙撃された。それが金曜日であった。前にある首相が同じ駅で刺されたのが金曜日、その以前に某が殺されたのも金曜日であった。不思議な暗合であるというような話がもてはやされたようである。実際そ・・・ 寺田寅彦 「時事雑感」
・・・早慶戦のあった金曜日の夕方例によって友人と新宿の某食堂で逢って連句をやろうと思っていると、○大学の学生が大勢押しかけて来て、ビールを飲んで卓を叩いて校歌を唄い出した。喧騒の声が地下室に充ちて向き合っての話声も聞取れなくなった。「一体勝って騒・・・ 寺田寅彦 「マーカス・ショーとレビュー式教育」
・・・というあたりの節廻しや三味線の手に至っては、江戸音曲中の仏教的思想の音楽的表現が、その芸術的価値においてまさに楽劇『パルシフヮル』中の例えば「聖金曜日」のモチイブなぞにも比較し得べきもののように思われるのであった。四 諦める・・・ 永井荷風 「妾宅」
・・・ 十二月七日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より〕 金曜日には久し振りで寿江子さんがお目にかかり、元気そうにしていらしたというので安心しました。 それに隆治さんのことについても指図していただいて有難う。今日光町と隆治さん・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・今夜は火曜日の夜で、今の家に移ってから火曜日と金曜日の午後を人に会う日にきめているので、三四人来て、かえったところです。林町の父にお歳暮に母のかたみの着物でどてらを縫って貰っていたのが出来上り。 私がこれをかくのは、ゆうべも考えてね、一・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・お正月の間は格子の上のはり紙をはがしておいたけれども又明日あたりから「まことに勝手ながらこの次お出で下さる時は火金曜日の午後にお願いいたします」を貼りましょう。実にいろいろなひとが来るものだと感心する位ですから。―― 一月の二十三日に行・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・普通の暦でその日は金曜日に当ったからすぐ「アズ石油」へ行って油田を見せて貰えるつもりでいたところが、生憎その日はペルシアの日曜日――何かの宗教的祝日で、大通りの商店、事務所、すっかり表戸をおろしているのであった。 仕方がないから、自分た・・・ 宮本百合子 「石油の都バクーへ」
・・・いかにも学年試験で亢奮しているらしく、争って場席をとりながら甲高な大きな声で喋り、「アラア、だって岡崎先生がそう云ってたよ、金曜日だってよ」「豊ちゃん! と、よ、ちゃんてば! 飯田さんやめたよ」 次の駅でその女学生たちは大抵降り・・・ 宮本百合子 「東京へ近づく一時間」
出典:青空文庫