・・・その光に透かして見れば、これは頭部銃創のために、突撃の最中発狂したらしい、堀尾一等卒その人だった。 二 間牒 明治三十八年三月五日の午前、当時全勝集に駐屯していた、A騎兵旅団の参謀は、薄暗い司令部の一室に、二人の支那・・・ 芥川竜之介 「将軍」
・・・ それから人を遣って調べさせて見ると相手の女学生はおおよそ一時間程前に、頸の銃創から出血して死んだものらしかった。それから二本の白樺の木の下の、寂しい所に、物を言わぬ証拠人として拳銃が二つ棄ててあるのを見出した。拳銃は二つ共、込めただけ・・・ 著:オイレンベルクヘルベルト 訳:森鴎外 「女の決闘」
・・・大腿の貫通銃創だ。「看護長殿、大西、なんぼ貰えます?」「踵を一寸やられた位で呉れるもんか。」「貰わにゃ引き合いません。」 負傷者は、それ/″\、自分が何項症に属するか、看護長に訊ねるのであった。何項症であるか、それによって恩・・・ 黒島伝治 「氷河」
・・・ それから人を遣って調べさせて見ると、相手の女学生はおおよそ一時間前に、頸の銃創から出血して死んだものらしかった。それから二本の白樺の木の下の、寂しい所に、物を言わぬ証拠人として拳銃が二つ棄ててあるのを見出した。拳銃は二つ共、込めただけ・・・ 太宰治 「女の決闘」
出典:青空文庫