・・・あるいは突然銃声が聞こえて窓ガラスに穴をあける、そこでカメラが回転して行って茂みに隠れた悪漢に到着するといったような、いわゆる非同時的な音響配偶によっていろいろの効果が収め得らるるのである。「西部戦線」の最後の幕で、塹壕のそばの焦土の上に羽・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・あれは遠い丸の内、それでも天気のいい時には吃驚りするほど座敷の障子を揺る事さえある、されば、すぐ崖下に狐を打殺す銃声は、如何に強く耳を貫くであろう。家中の女共も同じ事、誰れか狐に喰いつかれはしまいか。お狐様は家の中まで荒れ込んで来はしまいか・・・ 永井荷風 「狐」
・・・一九一七年十月、革命の第一の銃声が轟いた、その瞬間から、今日まで持続している問題だ。その頃は、コルニーロフの反革命軍や、チェッコ・スロヴァキアの反革命軍が、南方ロシアを掠めようとした。アメリカと日本とがシベリアで帝国主義の利益のための火事場・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ この年七月蘆溝橋に轟いた銃声は日本の社会の相貌を急変させたと同時に、その年の秋には報告文学の問題が中心に立ち現れて来た。海を渡って早速何人かの作家が現地視察に赴き、その報告の文章が各雑誌に競って載せられた。社会事情の変化と共に大陸を背・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・これらの人々は、ゴーリキイのように終始一貫作家としての活動で歴史の推進に参加し、それを反映すると同時に進む歴史の指導的な力に導かれて偉大な完成を遂げた芸術家、或はフールマノフのように銃声の間にも手ずれたノートを皮外套の下から取り出して、その・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムへの道」
出典:青空文庫