・・・は芝の新銭座からわざわざ築地のサンマアズ夫人の幼稚園か何かへ通っていた。が、土曜から日曜へかけては必ず僕の母の家へ――本所の芥川家へ泊りに行った。「初ちゃん」はこう云う外出の時にはまだ明治二十年代でも今めかしい洋服を着ていたのであろう。僕は・・・ 芥川竜之介 「点鬼簿」
引続きまして、梅若七兵衞と申す古いお話を一席申上げます。えゝ此の梅若七兵衞という人は、能役者の内狂言師でございまして、芝新銭座に居りました。能の方は稽古のむずかしいもので、尤も狂言の方でも釣狐などと申すと、三日も前から腰を・・・ 著:三遊亭円朝 校訂:鈴木行三 「梅若七兵衞」
・・・一、社中に入らんとする者は、芝新銭座、慶応義塾へ来り、当番の塾長に謀るべし。一、義塾読書の順序は大略左の如し。社中に入り、先ず西洋のいろはを覚え、理学初歩か、または文法書を読む。この間、三ヶ月を費す。三ヶ月終りて、地理書・・・ 福沢諭吉 「慶応義塾新議」
出典:青空文庫