・・・日本では文学のわかる批評家が問題にしないような通俗小説が読者の低められている文化力の上で稼いでいるのと違って、例えば「鋼鉄は如何に鍛えられたか」が、所謂批評家の注意をひかぬ以前から、すでに大衆的な支持を得ていたというような事実が、文学作品の・・・ 宮本百合子 「近頃の話題」
・・・ 生活のなかで試され、鍛えられつつ生活にその力を及ぼしてゆく人間の知性は、普通なものであると同時に各々その人々に属した動的なものでもあるから、その人としての知性の限度が現実の或る条件のうちで負けることもまれではない。例えば、すぐれた生き・・・ 宮本百合子 「知性の開眼」
・・・レーニン的党派性に鍛えられることによって、同志小林は、複雑、矛盾するこの世の諸現象を根源に横たわる、社会的階級的相関関係において把握することを体得し、即ち真理をより正確にとらえ得るに到っていたのである。 同志貴司山治は『改造』四月号の「・・・ 宮本百合子 「同志小林の業績の評価によせて」
・・・人間は追々その火を使うことを学び、はじめて鉄を鍛え、それで耕具や武器をこしらえることを発見した。火と鉄とは人類の発展のための端緒であった。この社会の現実をギリシアの人々は正当に理解した。巨人プロメシウスの勇気は、美しく高く評価された。しかし・・・ 宮本百合子 「なぜ、それはそうであったか」
・・・彼の作品「鋼鉄はいかに鍛えられたか」は邦訳された。遺憾なことにこの小説の翻訳はその内容の性質によって発売を禁ぜられた。出版当時には二三の人によって作品評を試みられていたのであった。この小説は作者オストロフスキーがロシアの国内戦当時自身経験し・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムへの道」
・・・働く人民の生活安定と自由と建設がなければそのうちに育て鍛えられる新しい人民的自己というものの確立はありません。ですから、さっき一番始めに申しましたように安倍源基が市民生活の中へまぎれ込んで来るとか、にせ気違いかなんか知りませんが、東條の頭を・・・ 宮本百合子 「平和運動と文学者」
・・・現実は強く彼を鍛え、書物に対する判断、芸術における現実性の価値の評価についてまで、少年らしい夢の底で正しい本質をついている。パリやベルリンのいろいろな生活についても知っていた。しかし、彼は当時の自分の力では打ち破ることの出来なかった周囲のご・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・暴圧はわれわれの力を鍛え、今度の拡大協議会解散後のデモの画期的成功はどうでしょう! 暴圧の嵐はプロレタリアート・農民・インテリゲンチアの解放に向って燃える焔を消し得ないばかりか、ますます強固な鉄の団結を教える尊い証拠です。 私をついに釈・・・ 宮本百合子 「ますます確りやりましょう」
・・・その恰幅と潮風に鍛えられた喉にふさわしい低い幅のある荘重な音声で草稿にしたがって読まれる演説は、森として場内の隅々まで響いた。どことなしお国の訛が入る。 つづいて桜内蔵相。内容はともかくとしてやはり声はよく耳に入った。畑陸相が登壇すると・・・ 宮本百合子 「待呆け議会風景」
・・・ 心を追っかけることばかりをせずに、自分の心を素早くつかまえて、それを吟味して、整調し健康な場所に置くだけの、精神の運動神経が鍛えられなければならない。スポーツとソプラノで、多数の若い女が只動物的な活力を横溢させている一方、少し頭脳型の・・・ 宮本百合子 「私たちの社会生物学」
出典:青空文庫