・・・日本が鎖国として自給自足に甘んじているうちはとにかく世界の強国として乗り出そうとする場合に、この事実が深刻な影響を国是の上に及ぼして来るのである。それはとにかくこのようにいろいろのものが少しずつ備わっているということがあらゆる点で日本の自然・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・昔日鎖国の世なれば、これらの諸件に欠点あるも、ただ一国内に止まり、天に対し同国人に対しての罪なりしもの、今日にありては、天に対し同国人に対し、かねてまた外国人に対して体面を失し、その結局は我が本国の品価を低くして、全国の兄弟ともにその禍を蒙・・・ 福沢諭吉 「学者安心論」
・・・日本はこの十数年間、鎖国の状態で、世界事情は知られなかった。そのために、スペインの民主戦線に有名なパッショナリーアと呼ばれた婦人がいたことも知らなければ、大戦中フランスの大学を卒業した知識階級の婦人たちの団体が、どんなにフランスの自由と解放・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
・・・徳川の鎖国の方針が七郎兵衛の運命を幾変転させたばかりでなく、今日の日本の動きにかかわり来っていることも、読者はおのずから行間に会得するだろう。 高木氏の歴史小説への態度には、一つの歩み出した積極なものがあると思う。そして、その積極なもの・・・ 宮本百合子 「今日の文学の諸相」
・・・日本はもう鎖国していた。それから、三世紀に亙る徳川の封建時代。半分チョン髷の心理がのこっている明治。ひきつづききょうまでわたしたちの国際的な感覚は不運な歴史のつづきである。 日本が地理的に大陸からはなれていて、人民の経済能力が低いことは・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
・・・そして、これまで文化の上に軍国主義的鎖国をうけて来た日本の精神を開放し、より人類的に、より民主的に豊にするために、この問題が最も聰明に解決されることを求めている。資本主義出版企業の矛盾の国際性について理解しはじめている。 外国の教養、言・・・ 宮本百合子 「文化生産者としての自覚」
・・・日本の歴史を見て、深い驚きにうたれることは、ヨーロッパにおいて人文復興のルネッサンスが起り、近代に向う豊富な社会生活と文化とが発生しはじめた丁度その頃に、徳川の完全な鎖国政策がはじまったことである。ヨーロッパが、まだ蒙昧な、半ば野蛮時代の生・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・ しかし文化的でない、別の理由から出た鎖国政策は、ヒステリックな迫害によって、この時代に日本人の受けたヨーロッパ文化の影響を徹底的に洗い落としてしまった。その影響の下に日本人の作り出した文化産物も偶然に残存した少数の例外のほかは、実に徹・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫