・・・円形運動ではレコードや、ダイアルの回転があるほかに、新工場開場式のクライマックスに吹き起こる狂風の複雑な旋転的乱舞がやはり全編の運動のクライマックスを成しているのである。そのあとで、解放された男女職工が野外のメイポールの下で踊るのがやはり円・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・ それはとにかく、実に幸いなことには事件の発生時刻が朝の開場間ぎわであったために、入場顧客が少なかったからこそ、まだあれだけの災害ですんだのであるが、あれがもしや昼食時前後の混雑の場合でもあったとしたら、おそらく死傷の数は十数倍では足り・・・ 寺田寅彦 「火事教育」
・・・ 開場前四十分ほどだのにもうかなり入場者があった。二階の休憩室には色々な飾り物が所狭く陳列してあって、それに「花○喜○丈」と一々札がつけてある。一座の立役者Hの子供の初舞台の披露があるためらしい。ある一つの大きな台に積上げた品物を何かと・・・ 寺田寅彦 「初冬の日記から」
・・・降雨のほうでは、全雨量の平均幾割幾分が開場時間に落ちるかが定まり、また外出する市民の平均幾%がこの百貨店に入り、その平均幾%がX売り場に到着しその中の平均幾%が買い物をし、そうして一人の支払い額が平均いくばくであるということが考え得られると・・・ 寺田寅彦 「物質群として見た動物群」
・・・こんやは新らしいポラーノの広場の開場式だ。」「それでは酒を呑まずに水を呑むぅとやるか。」その年よりが云いました。 みんなはどっとわらいました。「よしやろう。表へ出て。おいミーロ、おれが水を汲んでくるから、きみは戸棚からコップをだ・・・ 宮沢賢治 「ポラーノの広場」
・・・「本日、劇場はただ労働者諸君のためにだけ開場する」――職業組合がモスクワじゅうの劇場の切符を労働者に分けるんだ。五月二日、モスクワじゅうの数万人の労働者が、昼間はのんびり散歩して、夜は芝居を観る。これは、小さなことか? ――……あんまり・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
出典:青空文庫