・・・ ――金石の湊、宮の腰の浜へ上って、北海の鮹と烏賊と蛤が、開帳まいりに、ここへ出て来たという、滑稽な昔話がある―― 人待石に憩んだ時、道中の慰みに、おのおの一芸を仕ろうと申合す。と、鮹が真前にちょろちょろと松の木の天辺へ這って、脚を・・・ 泉鏡花 「瓜の涙」
・・・ 少年は、おじいさんのげたの鼻緒をたてていますと、あごひげの白いおじいさんは、つえによりかかってあたりを見まわしていましたが、「あすは、お寺のお開帳で、どんなにかこの辺は人通りの多いことだろう。お天気であってくれればいいが。」といい・・・ 小川未明 「石をのせた車」
・・・ 観行院様は非常に厳格で、非常に規則立った、非常に潔癖な、義務は必らず果すというような方でしたから、種善院様其他の墓参等は毫も御怠りなさること無く、また仏法を御信心でしたから、開帳などのある時は御出かけになり、柴又の帝釈あたりなどへも折・・・ 幸田露伴 「少年時代」
出典:青空文庫