・・・私はせわしくそれをとめて、二つの足あとの間隔をはかったり、スケッチをとったりしなければなりませんでした。足あとを二つつづけて取ろうとしている人もありましたし、も少しのところでこわした人もありました。 まだ上流の方にまた別のがあると、一人・・・ 宮沢賢治 「イギリス海岸」
・・・烏の大尉の部下が十八隻、順々に飛びあがって大尉に続いてきちんと間隔をとって進みました。 それから戦闘艦隊が三十二隻、次々に出発し、その次に大監督の大艦長が厳かに舞いあがりました。 そのときはもうまっ先の烏の大尉は、四へんほど空で螺旋・・・ 宮沢賢治 「烏の北斗七星」
・・・実にまっすぐに実に間隔正しくそれを掘ったのでした。虔十の兄さんがそこへ一本ずつ苗を植えて行きました。 その時野原の北側に畑を有っている平二がきせるをくわえてふところ手をして寒そうに肩をすぼめてやって来ました。平二は百姓も少しはしていまし・・・ 宮沢賢治 「虔十公園林」
・・・その時ネネムは、ふともっと向うを見ますと、大抵五間隔きぐらいに、あくびをしたりうでぐみをしたり、ぼんやり立っているものがまだまだたくさん続いています。そこでネネムが云いました。「一寸待て。まだ向うにも監督が沢山居るようだ。よろしい。順ぐ・・・ 宮沢賢治 「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
・・・高圧線のヤグラが一定の間隔をおいてかなたへ。――いそいでもう一方を見たら、電線は鉄道線路を越えて、再びヒンデンブルグの前髪のような黒い密林のかなたへ遠くツグミの群がとび立った。今シベリアを寂しい曠野と誰が云うことが出来よう。 エカテリン・・・ 宮本百合子 「新しきシベリアを横切る」
・・・りに住んでいた時代、近くは急速な思想的動揺、歴史の転廻の時代、あなたはいつも其等の新興力に接触を保ち、作家として其等に無反応であるまいとする敏感性を示されましたが、しかし、それは常にあなたとして一定の間隔をおいてのことでした。或る時は理解あ・・・ 宮本百合子 「含蓄ある歳月」
・・・ 大人の生活と子供の生活との間のある間隔の欲望、これは現在ソヴェトの意識ある若い時代共通の望みだ。ソヴェトである程度以上年齢の差ある大人と子供は大人子供というより、根本的に世界観の違った旧人間と新人間の差である場合が多い。彼らは社会主義・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・というどこやら謙遜めいた題から私は作者がこの十数年間に人間として身にとりあつめて来たものの内容と、現在作家として感じようとする文学的雰囲気とでもいうようなものとの間に、何か不安定な間隔が介在していることを感じた。私はこの作者が、都会人らしく・・・ 宮本百合子 「十月の文芸時評」
・・・ 夢の中で或る間隔を置いて並んで横になっていた私に感じられていた宮本の体の量感が、さめてのちもはっきりと私の横に残っている。深夜の天井を大きく見ひらいた目で眺めながら、私はその感じに沈んで寝ているのであったが、次第に強く感情を動かして来・・・ 宮本百合子 「日記」
・・・足と足とをつき合わせる位置に、ひろく間隔をおいて、幾つも寝台が並んでる。どれも真新しいシーツにおおわれ、いざと云えば直ぐ役に立つように出来ている。入ったところの寝台へ一人若い女が白い産院の服を着て臥ている。痛む最中と見え、唸って、医員の手を・・・ 宮本百合子 「モスクワ日記から」
出典:青空文庫