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・・・ 一体、孫八が名だそうだ、この爺さんは、つい今しがた、この奥州、関屋の在、旧――街道わきの古寺、西明寺の、見る影もなく荒涼んだ乱塔場で偶然知己になったので。それから――無住ではない、住職の和尚は、斎稼ぎに出て留守だった――その寺へ伴われ・・・
泉鏡花
「神鷺之巻」
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・・・もらひ来る傘の下小原女の五人揃ふて袷かな照射してさゝやく近江八幡かな葉うら/\火串に白き花見ゆる卓上の鮓に眼寒し観魚亭夕風や水青鷺の脛を打つ四五人に月落ちかゝる踊かな日は斜関屋の槍に蜻蛉かな柳散り清水涸れ石と・・・
正岡子規
「俳人蕪村」