・・・この言葉ほどひどく誤解されてそしてそのおかげでエキザクトな物理学の進歩を阻害している言葉はない。「量的に」この言葉も同様である。 六「中等教科書に現われた物理ほど非物理的な物理はない」こんなパラドクシカルな事もある意・・・ 寺田寅彦 「人の言葉――自分の言葉」
・・・しかしそういうものはいくらあっても、決して科学の進歩を阻害する心配はないのである。科学という霊妙な有機体は自分に不用なものを自然に清算し排泄して、ただ有用なるもののみを摂取し消化する能力をもっているからである。しかしもしも万一これら質的研究・・・ 寺田寅彦 「量的と質的と統計的と」
・・・既にこの数年の間にかほど進歩の機運が熟するとしたなら、突然それを阻害する事情の起らない限りは、文芸院などという不自然な機関の助けを藉りて無理に温室へ入れなくても、野生のままで放って置けば、この先順当に発展するだけである。我々文士からいっても・・・ 夏目漱石 「文芸委員は何をするか」
・・・ 又、自分は、「更に恋愛もしくは愛する者との結合は決して人生に価値ある目的の到達を容易ならしめるものでなく、却って此を阻害するものであることに気附かなくてはならぬ。」 勿論、配偶者の如何によって、其は明である。・・・ 宮本百合子 「結婚に関し、レークジョージ、雑」
・・・れで昔から日本には女の人は親に従い夫に従い老いては子に従うという言葉がありまして、夫に従うとともにお姑に従うという習慣がありますから、家庭のなかで伸び伸びしてみなが相談して明るくやってゆくという気分が阻害されます。つまり人間らしいものが失わ・・・ 宮本百合子 「幸福の建設」
・・・富農の勢力拡大と階級擁護のために、そのような名をかぶった一味がトラクターを富農の手に騙しとり、集団化を阻害しようとした。彼等がスローガンとした「工業化」の上へはもう一つ書かれぬ言葉、「反革命的」という文句があったのである。 ところで「パ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・家は潔白な生活をしているなどと云っているけれども、そして、フランスの防衛の準備がおくれたのは総てそれら私闘が原因であるかのように云っているが、では、ダラディエやレイノーは、何故そんなに互に対立したり、阻害し合ったりしなければならなかったのだ・・・ 宮本百合子 「今日の生活と文化の問題」
・・・或る賞のために努力した若い作家は、多くの場合その賞の審査員である諸作家の影響というものに対して、全く自立的な感情を持ち得ないであろうし、又私などはそのことで自身の芸術の素直な発展を阻害されている何人かの人を知っている。 今日の国家経済の・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・を書く随筆趣味が純文学となって」身辺を描き私を描きつづけ、「可能の世界の創造」を忘れ「物語を構成する小説本来の本格的なリアリズムの発展」を阻害した、と観察された。そして、従来、純文学と通俗小説との区別のために重要なモメントとされて来た文学的・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・日本の重大な運命にかかわるとき、上流婦人が、反動的であることさえ人民の発展の阻害であるのに、なおその上、彼らが自分らの無智を知らず、厚顔になりきった社交性につり出されて、男でさえ、まともな暮しをする者は、行かないところである待合で、待合政治・・・ 宮本百合子 「逆立ちの公・私」
出典:青空文庫