・・・あろうと、ごめん蒙って素裸になり、石鹸ぬたくって夕立ちにこの身を洗わせたくてたまらぬ思いにこがれつつ、会社への忠義のため、炎天の下の一匹の蟻、わが足は蠅取飴の地獄に落ちたが如くに、――いや、またしても除名の危機、おゆるし下さい、つまり、友人・・・ 太宰治 「喝采」
・・・左記の三十種の事物について語れば、即時除名のこと。四十歳。五十歳。六十歳。白髪。老妻。借銭。仕事。子息令嬢の思想。満洲国。その他。』――あとの二つは、講談社の本の広告です。近日、短篇集お出しの由、この広告文を盗みなさい。お読み下さい。ね。う・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・ましてや、温和なチェホフが、壮年のゴーリキイを除名したアカデミーにたいして、自分がアカデミシャンであることを恥じると抗議したような、温和にして剛毅な文学の精神は、日本の当時に存在しなかったのである。 十三年代に明瞭にあらわれた、この文化・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・まして、同級生の中で、いくらか違った生きかたをしたものは、まるで別ものになって、たとえば私は、自分の卒業した女学校の会友名簿からは除名になるという名誉をになっているらしい。らしい、というのは、はっきりそういう通知さえよこさないから。 こ・・・ 宮本百合子 「女の学校」
・・・吉本興業のような漫才発明の興行者から、今度除名された講談社まで、彼等の尨大な富は、地方を文化の市場として、地方の低さを餌食にして、築き上げられたのである。 都会の文化と地方の文化とは分裂させられていた。企業家にとって、地方は、文化的殖民・・・ 宮本百合子 「木の芽だち」
・・・ 女の社会的価値を無視したことをやれば勿論除名もされ得る。けれどもそれだけが第一の問題となって除名されるということはない。 つまりそういうことをするのがその男の社会連帯責任を無視する一つの実例として見られるのだ。 ・・・ 宮本百合子 「ソヴェトに於ける「恋愛の自由」に就て」
・・・女の社会的価値を無視したことをやれば勿論除名もされ得る。だけれどもそれだけが第一の問題となって除名されるということはない。つまりそういうことをするのがその男の社会連帯責任を無視する一つの実例として見られるのです。 それからお互の性的関係・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
・・・その時、フランス、イギリス、ドイツ、ロシアのブルジョア新聞は手を拍ってよろこび、レーニンはゴーリキイを除名したと宣伝した。ゴーリキイ自身これに対して闘い、レーニンはその時党機関紙『プロレタリア』に特別な論文を書いた。「同志ゴーリキイは、彼の・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」
・・・ゴーリキイはソヴェト・ロシアを見すてたとか、レーニンと不和になって除名をうけたとか。 五年の歳月は事実において、そういう見方の誤っていたことを示した。一九二八年の初夏、五年ぶりでゴーリキイがソヴェト同盟に帰って来た時、彼は大衆的な歓迎の・・・ 宮本百合子 「逝けるマクシム・ゴーリキイ」
・・・三九年十二月に国際連盟はソヴェト同盟を除名し、ナチス軍はノルウェー、デンマーク、オランダ、ベルギーを侵略した。そして独ソ間の不可侵条約をあざ嗤って、ナチスの大軍がウクライナへとなだれこんだころ、わたしは、しばしばかつてよんだフランス女学生の・・・ 宮本百合子 「私の信条」
出典:青空文庫