・・・勿論天運を除外例としても。 天国の民 天国の民は何よりも先に胃袋や生殖器を持っていない筈である。 或仕合せ者 彼は誰よりも単純だった。 自己嫌悪 最も著しい自己嫌悪の徴候はあらゆる・・・ 芥川竜之介 「侏儒の言葉」
・・・ 彼らは民衆を基礎として最後の革命を起こしたと称しているけれども、ロシアにおける民衆の大多数なる農民は、その恩恵から除外され、もしくはその恩恵に対して風馬牛であるか、敵意を持ってさえいるように報告されている。真個の第四階級から発しない思・・・ 有島武郎 「宣言一つ」
・・・にいっているように、従来現存していたところの人々間の美しい精神的交渉は、漸次に廃棄されて、精神を除外した単なる物的交渉によっておきかえられるに至った。すなわち物心という二要素が強いて生活の中に建立されて、すべての生活が物によってのみ評定され・・・ 有島武郎 「想片」
・・・この快楽を目して遊戯的分子というならば、発明家の苦辛にも政治家の経営にもまた必ず若干の遊戯的分子を存するはずで、国事に奔走する憂国の志士の心事も――無論少数の除外はあるが――後世の伝記家が痛烈なる文字を陳ねて形容する如き朝から晩まで真剣勝負・・・ 内田魯庵 「二葉亭四迷」
・・・「じつは、僕も発起人の一人となっていて、今さらこんな我儘を言ってすまないわけだが、原口君とか馬越君とかそうした親しい友人を除外した、全然出版屋政策本位の会だとすると、僕の気持としては、出席したくはないのだ。もともとそうした動機からなりた・・・ 葛西善蔵 「遁走」
・・・しかし病気というものは決して学校の行軍のように弱いそれに堪えることのできない人間をその行軍から除外してくれるものではなく、最後の死のゴールへ行くまではどんな豪傑でも弱虫でもみんな同列にならばして嫌応なしに引き摺ってゆく――ということであった・・・ 梶井基次郎 「のんきな患者」
・・・ 二人だけは帰って行く者の仲間から除外されて、待合室の隅の方で小さくなっていた。二人は、もと/\よく気が合ってる同志ではなかった。小村は内気で、他人から云われたことは、きっとするが、物事を積極的にやって行くたちではなかった。吉田は出しゃ・・・ 黒島伝治 「雪のシベリア」
・・・彼は云います、『一般に伝記というものは何でも語っているが、只我々にとって重要なことは除外しているものだ。』ぼくは前の饒舌を読み返して、イヤになる。差し上げまいかとも思ったのですが、一遍書いたものは、もう僕と異ったものですから、虚飾にみちた自・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・これは断じて、断じてという言葉を二度使ったわけであるが、断じて除外しよう。いま読みかえし、私自身にさえ、意味不明の箇所が、それらの作品には散見されるのである。意味不明の文章が散見されるということだけでも、私は大いに恥じなければいけない。これ・・・ 太宰治 「春の盗賊」
・・・入江の家を語るのに、その祖父、祖母を除外しては、やはり、どうしても不完全のようである。私は、いまはそのお二人に就いても語って置きたいのである。そのまえに一つお断りしなければならない事がある。それは、私の之からの叙述の全部は、現在ことしの、入・・・ 太宰治 「ろまん燈籠」
出典:青空文庫