出典:gooニュース
「陥穽」 才能と評価の隔たりに苦しむ姿 朝日新聞書評から
すなわち陸奥の「青春の陥穽(かんせい)」を解き明かすことである。 そのために著者は、いくつもの道具立てを用意する。 まずは主語だ。余、陸奥、小二郎のごとくさりげなく変えながら、著者は、陸奥の獄舎生活4年余に焦点を当てる。そして静かな描写の中に彼のダイナミックな前半生を組み込んでいく。
辻原登さん「陥穽 陸奥宗光の青春」 青春時代の困難と挫折、「日本外交の父」に重ねる自身の歩み
タイトルの「陥穽」は、理想と現実の間にある落とし穴を指している。「陸奥の場合、立憲民主政体をつくりたい、という現実的な理想を抱いていた。でも、理想を実現するための手法が非現実的だった」 陥穽(あな)の中である監獄生活こそ、この小説の眼目だ。陸奥は差し入れてもらった大量の本を読んで過ごし、ベンサムの主著「道徳および立法の諸原理序説」の全訳を完成させる。
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