・・・ 十七、陸海軍の術語に明き事。少年時代軍人になる志望ありし由。 十八、正直なる事。嘘を云わぬと云う意味にあらず。稀に嘘を云うともその為反って正直な所がわかるような嘘を云う意味。 芥川竜之介 「彼の長所十八」
・・・「大本営陸海軍部発表。帝国陸海軍は今八日未明西太平洋において米英軍と戦闘状態に入れり。」 しめ切った雨戸のすきまから、まっくらな私の部屋に、光のさし込むように強くあざやかに聞えた。二度、朗々と繰り返した。それを、じっと聞いているうち・・・ 太宰治 「十二月八日」
・・・もっとも非常時の陸海軍では民間飛行の場合などとちがって軍機の制約から来るいろいろな止み難い事情のために事故の確率が多くなるのは当然かもしれないが、いずれにしても成ろうことならすべての事故の徹底的調査をして真相を明らかにし、そうして後難を無く・・・ 寺田寅彦 「災難雑考」
・・・問題は一に国防の充実いかんにかかっている。陸海軍当局者が仮想敵国の襲来を予想して憂慮するのももっともな事である。これと同じように平生地震というものの災害を調べているものの目から見ると、この恐るべき強敵に対する国防のあまりに手薄すぎるのが心配・・・ 寺田寅彦 「時事雑感」
・・・思うに日本のような特殊な天然の敵を四面に控えた国では、陸軍海軍のほかにもう一つ科学的国防の常備軍を設け、日常の研究と訓練によって非常時に備えるのが当然ではないかと思われる。陸海軍の防備がいかに充分であっても肝心な戦争の最中に安政程度の大地震・・・ 寺田寅彦 「天災と国防」
・・・近頃英国の某新聞で陸海軍人の待遇を論じたのについて某科学雑誌記者は次のような事を云っている。「科学研究の重要な事は誰も認めているが何かの場合にはとかく不遇になりがちである。これはつまり国務大臣や宮中の人が科学に縁のない人ばかりだからであろう・・・ 寺田寅彦 「話の種」
・・・どの国もどの国も陸海軍を拡げ、税関の隔てあり、兄弟どころか敵味方、右で握手して左でポケットの短銃を握る時代である。窮屈と思い馬鹿らしいと思ったら実に片時もたまらぬ時ではないか。しかしながら人類の大理想は一切の障壁を推倒して一にならなければ止・・・ 徳冨蘆花 「謀叛論(草稿)」
・・・情報局の陸海軍人が出版物統制にあたって、自分たちの書いたものを出版させて印税をむさぼりながらすべての平和、自由を窒息させた。文学報国会が大会を陸海軍軍人の演説によって開会し、出席する婦人作家はもんぺい姿を求められたというようなことは日本の文・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第五巻)」
・・・ソヴェト作家団体連盟と赤色陸海軍作家同盟とは、その具体的なプランを示してくれ。 更にラップは、文学の組織的生産の問題に向ってみんなの注意を喚起した。ソヴェトの全生産は、映画・出版のような文化生産をこめて生産経済計画によってされている。今・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・作家団体と赤色陸海軍作家連盟とがその師匠役の組織的形態を示してくれることを我々は希望している。」「ラップ」の新鋭作家たちの間では、文学の組織的生産が問題としてとりあげられるようになった。ソヴェトで、あらゆる生産は計画生産だ。そこにこそ、・・・ 宮本百合子 「ソヴェト文壇の現状」
出典:青空文庫