・・・それと同様に、一応野望的な作家の心に湧いたより活溌な、より広汎な、より社会的な文学行動への欲望が、その当然な辛苦、隠忍、客観的観察、現実批判の健康性を内外から喪失して、しかも周囲の世俗の行動性からの衝撃に動かされ、作家のより溌剌な親しみのあ・・・ 宮本百合子 「おのずから低きに」
・・・ 婦人に離婚の自由が認められた、ということは、特にこれまで隠忍をつづけている、日本の女性にとっては、何か復讐的な快感であるかもしれない。妻に向って「出てゆけ」という言葉は、これまでのように、出てゆけば明日から路頭に迷わなければならないも・・・ 宮本百合子 「離婚について」
・・・今やその隠忍から擡頭せるものは彼らである。勝利の盃盤は特権の簒奪者たる富と男子の掌中から傾いた。しかし吾々は、肉迫せる彼ら二騎手の手から武器を見た。彼らの憎悪と怨恨と反逆とは、征服者の予想を以て雀躍する。軈て自由と平等とはその名の如く美しく・・・ 横光利一 「黙示のページ」
出典:青空文庫