・・・こいねがわくは吾が党の士、千里笈を担うてここに集り、才を育し智を養い、進退必ず礼を守り、交際必ず誼を重じ、もって他日世になす者あらば、また国家のために小補なきにあらず。かつまた、後来この挙に傚い、ますますその結構を大にし、ますますその会社を・・・ 福沢諭吉 「慶応義塾の記」
・・・またすぐ眼の下のまちまでがやっぱりぼんやりしたたくさんの星の集りか一つの大きなけむりかのように見えるように思いました。六、銀河ステーション そしてジョバンニはすぐうしろの天気輪の柱がいつかぼんやりした三角標の形になって、しば・・・ 宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
・・・音楽を専門にやっているぼくらがあの金沓鍛冶だの砂糖屋の丁稚なんかの寄り集りに負けてしまったらいったいわれわれの面目はどうなるんだ。おいゴーシュ君。君には困るんだがなあ。表情ということがまるでできてない。怒るも喜ぶも感情というものがさっぱり出・・・ 宮沢賢治 「セロ弾きのゴーシュ」
・・・みんなもまわりに集りました。穂吉はどうしたのか折られた脚をぷるぷる云わせその眼は白く閉じたのです。お父さんの梟は高く叫びました。「穂吉、しっかりするんだよ。今お説教がはじまるから。」 穂吉はパチッと眼をひらきました。それから少し起き・・・ 宮沢賢治 「二十六夜」
・・・是等諸氏はみな信者諸氏と同じく、各自の主義主張の為に、世界各地より集り来った真理の友である。恐らく諸氏の論難は、最痛烈辛辣なものであろう。その愈々鋭利なるほど、愈々公明に我等はこれに答えんと欲する。これ大祭開式の辞、最後糟粕の部分である。祭・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・ 最後に会ったのは、壺井栄さんの『暦』の出版のおよろこびの集りの時であった。短い間であったが心持よく世間話をした。そのときの小熊さんは、特徴ある髪も顔立ちも昔のままながら、相手と自分との間の空気から自分の動きを感じとろうとしてゆくような・・・ 宮本百合子 「旭川から」
・・・けれどもそれが行われないから婦人画家たちだけの集りや催しがもたれて行くことになる。そして日本の社会としての弱点は大変のろいテンポでしか克服されない。 婦人の実力がまだ低いから、社会的に経済的に、また政治的に平等であることは早すぎるという・・・ 宮本百合子 「明日をつくる力」
・・・ 非常に肉の薄い細く分れた若葉の集り。 一つ一つの葉が皆薄小豆色をして居て、ホッサリと、たわむ様にかたまった表面には、雨に濡れた鈍銀色と淡い淡い紫が漂って居る。 細い葉先に漸々とまって居る小さい水玉の光り。 葉の重り重りの作・・・ 宮本百合子 「雨が降って居る」
・・・日本婦人協力会というような、戦争協力者の集りのような婦人団体は、せめて彼女らが女性であるという本然の立場に立って、時間と金とを、そのような母と子とのために現実性のある功献に向けるべきであると、警告すべきであった。日本婦人協力会には、検事局の・・・ 宮本百合子 「石を投ぐるもの」
・・・いわば、その零のごとき空虚な事実を信じて誰も集り祝っているこの山上の小会は、いまこうして花のような美しさとなり咲いているのかもしれない。そう思っても、梶は不満でもなければ、むなしい感じも起らなかった。「日ぐらしや主客に見えし葛の花」と、・・・ 横光利一 「微笑」
出典:青空文庫