・・・しかし、僕は、どんな難局に立っても、この女を女優に仕立てあげようという熱心が出ていた。 六 僕は井筒屋の風呂を貰っていたが、雨が降ったり、あまり涼しかったりする日は沸たないので、自然近処の銭湯に行くことになった。吉弥・・・ 岩野泡鳴 「耽溺」
・・・婦人の堅忍な心で難局をしのぐということの真の意味は、最低でも皆そうだからと変にすてて、安心した生活態度をさしているのではないことは明らかなことだと思う。 宮本百合子 「その先の問題」
・・・万民協力、この難局を突破しなければならないことは自明でありますが、それには従来の秘密主義で民をして依らしむべし、知らしむべからずではなりません。この態度は改められなければなりません。というようなところで、一きわ張り上げられる小川代議士の声も・・・ 宮本百合子 「待呆け議会風景」
・・・この歴史的難局を切りぬけるためには、各自の一票に極めて大きい責任がかかっていることを知っている。女のことを一番よく知っているのは女だから、という言葉の綾で生存の課題が解かれないことは、本能的に理解されているのである。女だから女へ、というよう・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫