・・・藁沓を履いて、綿ネルの布切で首から頭から包んだり、綿の厚くはいった紺の雪袴を穿いたり――女も――していた。そして耕吉の落着先きを想わせ、また子供の時分から慣れ親しんできた彼には、言い知れぬ安易さを感じさせるような雪国らしいにおいが、乗客の立・・・ 葛西善蔵 「贋物」
・・・黒い雪袴をはいた二人の一年生の子がどてをまわって運動場にはいって来て、まだほかにだれも来ていないのを見て、「ほう、おら一等だぞ。一等だぞ。」とかわるがわる叫びながら大よろこびで門をはいって来たのでしたが、ちょっと教室の中を見ますと、二人とも・・・ 宮沢賢治 「風の又三郎」
・・・黒い雪袴をはいた二人の一年生の子がどてをまわって運動場にはいって来て、まだほかに誰も来ていないのを見て「ほう、おら一等だぞ。一等だぞ。」とかわるがわる叫びながら大悦びで門をはいって来たのでしたが、ちょっと教室の中を見ますと、二人ともまる・・・ 宮沢賢治 「風野又三郎」
出典:青空文庫