・・・彼は雷電のごとくに馳駆し、風雨のごとくに敵を吹きまくり、あるいは瀑布のごとくはげしく衝撃するかと思えば、また霊鷲のように孤独に深山にかくれるのである。熱烈と孤高と純直と、そして大衆への哭くが如きの愛とを持った、日本におけるまれに見る超人的性・・・ 倉田百三 「学生と先哲」
・・・三十通あまりの、その手紙を、まるで谷川が流れ走るような感じで、ぐんぐん読んでいって、去年の秋の、最後の一通の手紙を、読みかけて、思わず立ちあがってしまいました。雷電に打たれたときの気持って、あんなものかも知れませぬ。のけぞるほどに、ぎょっと・・・ 太宰治 「葉桜と魔笛」
・・・ 昔の人は多くの自然界の不可解な現象を化け物の所業として説明した。やはり一種の作業仮説である。雷電の現象は虎の皮の褌を着けた鬼の悪ふざけとして説明されたが、今日では空中電気と称する怪物の活動だと言われている。空中電気とい・・・ 寺田寅彦 「化け物の進化」
・・・ 彼が雷電や地震噴火を詳説した目的は、畢竟これら現象の物質的解説によって、これらが神の所業でない事を明らかにし、同時にこれらに対する恐怖を除去するにあるらしい。これはまたそのままに現代の科学教育なるものの一つの目的であろう。しかし不幸に・・・ 寺田寅彦 「ルクレチウスと科学」
出典:青空文庫