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・・・「え、それは霊岸島の宿屋ですが……こうと、明日は午前何だから……阿母さん、明日夕方か、それとも明後日のお午過ぎには私が向うへ行きますからね、何とか返事を聞いて、帰りにお宅へ廻りましょう」 四 金之助の泊っているの・・・
小栗風葉
「深川女房」
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・・・このころは霊岸島の鹿島屋清兵衛が蔵書を借り出して来るのである。一体仲平は博渉家でありながら、蔵書癖はない。質素で濫費をせぬから、生計に困るようなことはないが、十分に書物を買うだけの金はない。書物は借りて覧て、書き抜いては返してしまう。大阪で・・・
森鴎外
「安井夫人」