・・・野山の狐鼬なら、面が白いか、黄色ずら。青蛙のような色で、疣々が立って、はあ、嘴が尖って、もずくのように毛が下った。」「そうだ、そうだ。それでやっと思いつけた。絵に描いた河童そっくりだ。」 と、なぜか急に勢づいた。 絵そら事と俗に・・・ 泉鏡花 「貝の穴に河童の居る事」
・・・一匹の青蛙がいつもそこにいた。電燈の真下の電柱にいつもぴったりと身をつけているのである。しばらく見ていると、その青蛙はきまったように後足を変なふうに曲げて、背中を掻く模ねをした。電燈から落ちて来る小虫がひっつくのかもしれない。いかにも五月蠅・・・ 梶井基次郎 「闇の絵巻」
・・・今夜、フランス製、百にちかい青蛙あそんでいる模様の、紅とみどりの絹笠かぶせた電気スタンドを、十二円すこしで買いました。書斎の机上に飾り、ひさしぶりの読書したくなって、机のまえに正坐し、まず机の引き出しを整理し、さいころが出て来たので、二、三・・・ 太宰治 「虚構の春」
出典:青空文庫