・・・蔵原惟人・青野季吉その他の人々によって、芸術の階級性ということが主張され、文学の社会性の課題がとりあげられていた。文学様式としては、第一次大戦後のドイツにおこった表現派、ダダイズムが流行的であった。 無産派文学の運動――すべての国で人民・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第三巻)」
・・・という悲しい諦めの心、或は、当時青野季吉によって鼓舞的に云われていた一つの理論「こんにちプロレタリア作家は、プロレタリア文学の根づよさに安んじて闊達自在の活動をする自信をもつべきである」という考えかたなどについて、作者は、ひとつ、ひとつ、そ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」
・・・無産者芸術運動、その文学の分野では、自然発生的に宮嶋資夫、葉山嘉樹、前田河広一郎、江口渙その他の無産階級出身の小説家の作品が登場し、芸術理論の面では、平林初之輔、青野季吉、蔵原惟人等によってブルジョア文芸批評の主観的な印象批評に対して、文学・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第六巻)」
・・・この作者はそういう表現をも人の世の姿へうち興じての味として活かそうとしているらしいが、結局は全篇の基調がそういう作者の現実への当りかたから角度を鈍らされていて、青野氏の評言どおりねてしまったのだと思える。この「運・不運」は書き改められる、材・・・ 宮本百合子 「今日の文学の諸相」
・・・性をも危くしかけている時期に、プロレタリア文学は人間の心に潜んでいる合則的なもの、合理的なものを愛する心、或は現代の生活に種々の疑いを抱くものの心に触れるその本質に依って存在を価値づけられて来ている。青野氏は最近の論文で、プロレタリア文学の・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・であるとして横光氏によって提出されたのである。青野季吉氏は「紋章」にすっかり「圧迫され」横光氏の「自由の精華」に讚辞を惜しまれなかったのであるが、横光氏のこの「高邁」の発明も、その傍観性、非動性、負かされづめで結局勝ったのだという主観的な独・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ この間『都新聞』に青野季吉氏がかかれた文章に、今のような時に文学の仕事なんかしていていいのかという不安をおぼえるということ、また、自分のような人間はせめて文学の仕事でもしているほかないとも思うということがかかれていて、もう文学はリアリ・・・ 宮本百合子 「作家と時代意識」
・・・けれども、この文学をして文学たらしめる一筋の道が果してめいめいの創作過程のなかで今日十分身につけつくされているであろうか。青野季吉氏が二月の『中央公論』に「作家の凝視」ということを書いていられる。現実を凝視する粘りづよさを作家に求めているの・・・ 宮本百合子 「作家に語りかける言葉」
・・・ つい先日の新聞にのった文芸時評で、青野季吉が、文壇文学からの「脱出」が試みられている一つながりの作品として数篇の小説にふれていた。 現代文学の行きづまりが感じられてから、脱出は「雲の会」となり「ロマネスク」の愛好となって賑やかに示・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・現代社会は頽廃しているというが、その頽廃の根源を看破することによって、作家は頽廃の性格から救われ、頽廃を克服することが可能である。青野氏は、かかる性質の教養こそ、知的探求こそ、現代の作家が必要としていることを主張することで、一層ヒューマニズ・・・ 宮本百合子 「十月の文芸時評」
出典:青空文庫