・・・嘗て「青鞜社」の活動の旺であった時代、伊藤野枝があなたのとなりに住んでいた時代、近くは急速な思想的動揺、歴史の転廻の時代、あなたはいつも其等の新興力に接触を保ち、作家として其等に無反応であるまいとする敏感性を示されましたが、しかし、それは常・・・ 宮本百合子 「含蓄ある歳月」
・・・に影響されて当時の青鞜社風の女性の自我の覚醒と、対立者としての男性および恋愛との格闘を主題とした「煤煙」は自然主義的なリアリズムと、主観的ロマンチズムのまざりあった作品であったと記憶します。その森田氏は長篇「輪廻」をかきました。これも自然主・・・ 宮本百合子 「心から送る拍手」
・・・ 明治も四十年代に入ったころ、平塚雷鳥などの青鞜社の運動があった。封建的なしきたりに反対して女も人間である以上自分の才能を発揮し、感情の自主性をもってしかるべきものと主張した。田村俊子の文学は明治の中葉から大正にかけて日本の女がどういう・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・ 景山英子は、その生涯の間には、婦人の社会的向上の問題の理解を次第に深めて、明治四十年代「青鞜」が発刊された頃には婦人の社会的な問題の土台に生産の諸関係を見、婦人の間に社会層の分裂が生じる必然の推移までを見て、平塚雷鳥が主観の枠内で女性・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
・・・その方面に関心をもっている人々は、明らかに自分たちの今日から明日への現実的な生き方を念頭において研究をも試みているのであり、日本の女性史の一瞬にパッと閃いて、やがてより濃い闇に埋められた「青鞜時代」のロマンティックな女性史への興味とは、おの・・・ 宮本百合子 「先駆的な古典として」
・・・「細雪」のようにきょうの一般の現実には失われた世界の常識にぬくもって、美文に支えられているとき、野上彌生子が、「迷路」にとりくんでいることは注目される。「青鞜」の時代、ソーニャ・コヴァレフスカヤの伝記をのせたが、青鞜の人々の行動の圏外にあっ・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
・・・ 一葉の時代でも或る種類の――内田魯庵という風な評論家たちはやはり一葉なんかの文学に対していろいろ疑問を持っていたけれども、平塚雷鳥の出た明治四十年頃、青鞜社の時代という頃には女の人自身が自分達で自分達の才能を発揮するようにという希望で・・・ 宮本百合子 「婦人の創造力」
・・・が現れた十八世紀のイギリスでは、女のおかれている事情を自分たちの努力でましなものにしようとしてモンタギュー夫人が率先して、二世紀も後に日本へその名がつたわった「青鞜」がすでに組織された、ということも、何か私たちには忘れられない。 ところ・・・ 宮本百合子 「三つの「女大学」」
・・・あの時代の現実は、青鞜社の時代で新しい歴史の頁をひらこうとした勇敢な若い婦人たちは、衒気を自覚しないで行動した頃であった。それにしろ、何か当時の漱石の文体が語っているようなある趣味で藤尾その他は描かれている部分が少くないように思える。最も面・・・ 宮本百合子 「歴史の落穂」
・・・ 平塚らいてう氏たちによってされた青鞜社の運動は、沢山の幼稚さやディレッタンティズムをもっていたにしろ、この社会へ女というものの存在を主張しようとする欲望の爆発として、歴史的なものであった。原始の女性は太陽であった。婦人の自由は社会生活・・・ 宮本百合子 「若き世代への恋愛論」
出典:青空文庫