・・・この工兵士官に預言者イザヤの精神がありました。彼の血管に流るるユグノー党の血はこの時にあたって彼をして平和の天使たらしめました。他人の失望するときに彼は失望しませんでした。彼は彼の国人が剣をもって失ったものを鋤をもって取り返さんとしました。・・・ 内村鑑三 「デンマルク国の話」
イエス其の弟子たちとピリポ・カイザリヤの村々に出でゆき、途にて弟子たちに問ひて言ひたまふ「人々は我を誰と言ふか」答へて言ふ「バプテスマのヨハネ、或人はエリヤ、或人は預言者の一人」また問ひ給ふ「なんぢらは我を誰と言ふか」ペテ・・・ 太宰治 「誰」
・・・禍害なるかな、偽善なる学者、汝らは預言者の墓をたて、義人の碑を飾りて言ふ、「我らもし先祖の時にありしならば、預言者の血を流すことに与せざりしものを」と。かく汝らは預言者を殺しし者の子たるを自ら証す。なんぢら己が先祖の桝目を充せ。蛇よ、蝮の裔・・・ 太宰治 「如是我聞」
・・・飛んだ預言者に捕まって、大迷惑だ」「移るのもいいかも知れんよ」「馬鹿あ言ってら、この間越したばかりだね。そんなにたびたび引越しをしたら身代限をするばかりだ」「しかし病人は大丈夫かい」「君まで妙な事を言うぜ。少々伝通院の坊主に・・・ 夏目漱石 「琴のそら音」
出典:青空文庫