・・・ 第一中根の叔父が銀行の頭取、そのほかに判事さんもいた、郡長さんもいた、狭い土地であるからかねてこれらの人々の交際は親密であるだけ、今人々の談話を聞くと随分粗暴であった。 玄関の六畳の間にランプが一つ釣るしてあって、火桶が三つ四つ出・・・ 国木田独歩 「鹿狩り」
・・・二十五歳で町長、重役頭取。二十九歳で県会議員。男ぶりといい、頭脳といい、それに大へんの勉強家。愚弟太宰治氏、なかなか、つらかろと御推察申しあげます。ほんとに。三日深夜。粉雪さらさら。北奥新報社整理部、辻田吉太郎。アザミの花をお好きな太宰君。・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・必ずしも一人の君主または頭取が独り暴威を逞しうして、悉皆他の人民を窘しむるがためにあらず。衆庶の力を集めてこれを政府となしまたは会社と名づけ、その集まりたる勢力を以て各個人の権を束縛し、以てその自由を妨ぐるものなり。この勢力を名づけて政府の・・・ 福沢諭吉 「教育の事」
・・・ 九郎右衛門等三人は河岸にある本多伊予守頭取の辻番所に届け出た。辻番組合月番西丸御小納戸鵜殿吉之丞の家来玉木勝三郎組合の辻番人が聞き取った。本多から大目附に届けた。辻番所組合遠藤但馬守胤統から酒井忠学の留守居へ知らせた。酒井家は今年・・・ 森鴎外 「護持院原の敵討」
・・・私の大学にいた頃から心安くした男で、今は某会社の頭取になっているのが、この女の檀那で、この女の妹までこの男の世話になって、高等女学校にはいっている。そこで年来その男と親くしている私を、鼠頭魚は親類のように思っているのである。 私は二階に・・・ 森鴎外 「余興」
出典:青空文庫