・・・って生ずる週期的すべり面の機巧から推して、単晶体の週期的すべり面の機巧を予想してみたこともあったが、これとても決して充分だと思われない、最近にガラス面に沿うて電気火花を通ずる時にその表面にできる微細な顕微鏡的な週期的の割れ目を平田理学士と共・・・ 寺田寅彦 「自然界の縞模様」
・・・ 降灰をそっとピンセットの先でしゃくい上げて二十倍の双眼顕微鏡でのぞいて見ると、その一粒一粒の心核には多稜形の岩片があって、その表面には微細な灰粒がたとえて言えば杉の葉のように、あるいはまた霧氷のような形に付着している。それがちょっとつ・・・ 寺田寅彦 「小爆発二件」
・・・ 宇宙のどこの果てからとも知れず、肉眼にも顕微鏡にも見えない微粒子のようなものが飛んで来て、それが地球上のあらゆるものを射撃し貫通しているのに、われわれ愚かなる人間は近ごろまでそういうものの存在を夢にも知らないでいたのである。その存在を・・・ 寺田寅彦 「蒸発皿」
・・・それで、遠景の碧味がかった色を生ずるような塵はよほど小さなもので、普通の意味の顕微鏡的な塵よりも一層微細なものではないかと疑いが起る。 普通の顕微鏡では見えないほどの細かい塵の存在を確かめ、その数を算定するために、アイケンという人が発明・・・ 寺田寅彦 「塵埃と光」
・・・ごまかしの八百倍の顕微鏡でのぞいたものをツァイスのでのぞいて見るような心持ちがした。精妙ないいものの中から、そのいいところを取り出すにはやはりそれに応ずるだけの精微の仕掛けが必要であると思った。すぐれた頭の能力をもった人間に牛馬のする仕事を・・・ 寺田寅彦 「蓄音機」
・・・その心になるものは通例、顕微鏡でも見えないほどの、非常に細かい塵のようなものです、空気中にはそれが自然にたくさん浮遊しているのです。空中に浮かんでいた雲が消えてしまった跡には、今言った塵のようなものばかりが残っていて、飛行機などで横からすか・・・ 寺田寅彦 「茶わんの湯」
・・・いつかこの若先生のところで顕微鏡を見せてもらって色々のプレパラートをのぞいているうちに一つの不思議な重大なアポカリプスを見せられた。後で考えてみたらそれは人間のスペルマトゾーンの一集団であったのである。それからまた珪藻のプレパラートを見せら・・・ 寺田寅彦 「追憶の医師達」
・・・低度の顕微鏡でのぞいてみると、ちょっと穀象のような恰好をした鉛のような鼠色の昆虫である。これが地下電線の被覆鉛管をかじって穴を明けるので、そこから湿気が侵入して絶縁が悪くなり送電の故障を起こすのだそうである。実に不都合な虫であるが、怒ってみ・・・ 寺田寅彦 「鉛をかじる虫」
・・・実際の明白な区別は、やはり両者を顕微鏡で検査してみて始めてわかるのではあるまいか。一方はただ不規則な乾燥したそして簡単な繊維の集合か、あるいは不規則な凹凸のある無晶体の塊であるのに、他方は複雑に、しかも規則正しい細胞の有機的な団体である。美・・・ 寺田寅彦 「病室の花」
・・・おおぜいの押し合う力の合力の自然変異のために神輿が不規則な運動をなしている状態は、顕微鏡下でたとえばアルコホルに浮かぶアルミニウムの微細な薄片のブラウン運動と非常によく似た状態を示している。もちろん活動写真にでもとってほんとうに調査してみな・・・ 寺田寅彦 「物質群として見た動物群」
出典:青空文庫