・・・後に道教となり風水説となれり。その道徳的方面に結びつきしは儒教也、易也。而して『書經』『禮記』は五行分子多く、孔子の説は道徳的分子に富みたり。 而してかの陰陽思想は延いてわが國に及び、神代史の構成に影響すること大なりき。〔明治四十五・・・ 白鳥庫吉 「『尚書』の高等批評」
・・・たとえば、五穀の豊饒を祈り、風水害の免除をいのり、疫病の流行のすみやかに消熄することを乞いのみまつったのである。かくして民族の安寧と幸福を保全することが為政者の最も重要な仕事の少なくも一部分であったのである。 この重要な仕事に連関して天・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・あるいは「向柏原山陵、申謝風水之ふうすいのわざわいをしんしゃせしむ」といったようなその時代としては適当な防止策が行われ、また最も甚だしく風水害を被った三千百五十九家のために「開倉廩賑給之」という応急善後策も施されている。比較的新しい方の例で・・・ 寺田寅彦 「颱風雑俎」
・・・昭和九年十年の風水害史だけでもこれを実証して余りがある。 西欧諸国を歩いたときに自分の感じたことの一つは、これらの国で自然の慈母の慈愛が案外に欠乏していることであった。洪積期の遺物と見られる泥炭地や砂地や、さもなければはげた岩山の多いの・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
出典:青空文庫