・・・それからその前お茶の手前が上がったとおっしゃって、下すったあの仁清の香合なんぞは、石へ打つけて破してしまうからいいわ。 善平はさらに掛構いもなく、天井を見てにこにこ笑いながら、いやもう綱雄は実にあっぱれな男さ。 また、また、父様はも・・・ 川上眉山 「書記官」
・・・それから、香合をほめる事などもあって、いよいよ懐石料理と酒が出るのであるが、黄村先生は多分この辺は省略して、すぐに薄茶という事になるのではあるまいか。聖戦下、贅沢なことを望んではならぬ。先生に於いても、必ずやこの際、極端に質素な茶会を催し、・・・ 太宰治 「不審庵」
・・・ 青磁の香炉に赤楽の香合のモンタージュもちょっと美しいものだと思う。秋の空を背景とした柿もみじを見るような感じがする。 博物館などのように青磁は青磁、楽は楽と分類的に陳列してあるのも結構ではあるが、しかしそういう器物の効果を充分に発・・・ 寺田寅彦 「青磁のモンタージュ」
出典:青空文庫