・・・』――『チャプリン氏を総裁に創立された馬鹿笑いクラブ。左記の三十種の事物について語れば、即時除名のこと。四十歳。五十歳。六十歳。白髪。老妻。借銭。仕事。子息令嬢の思想。満洲国。その他。』――あとの二つは、講談社の本の広告です。近日、短篇集お・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・恐怖の絶頂まで追いつめられると、おのずから空虚な馬鹿笑いを発する癖が、私に在る。なんだか、ぞくぞく可笑しくて、たまらなくなるのだ。胆が太いせいでは無くて、極度の小心者ゆえ、こんな場合ただちに発狂状態に到達してしまうのであるという解釈のほうが・・・ 太宰治 「乞食学生」
・・・あははは。馬鹿笑いが出ちゃった。」 だいこん。「地盤がいけないのですね。石ころだらけで、私はこの白い脚を伸ばす事が出来ませぬ。なんだか、毛むくじゃらの脚になりました。ごぼうの振りをしていましょう。私は、素直に、あきらめている・・・ 太宰治 「失敗園」
・・・私は、くるしい時に、ははんと馬鹿笑いしたくなるので困ります。内心大いに緊張している時でも、突然、馬鹿話などはじめたくなるので困ります。「笑いながら、厳粛な事を語れ!」ニイチェもいい事を言います。もっとも、私は、怒る時には、本気に怒ってしまい・・・ 太宰治 「小さいアルバム」
・・・いよいよ茶会の当日には、まず会主のお宅の玄関に於いて客たちが勢揃いして席順などを定めるのであるが、つねに静粛を旨とし、大声で雑談をはじめたり、または傍若無人の馬鹿笑いなどするのは、もっての他の事なのである。それから主人の迎附けがあって、その・・・ 太宰治 「不審庵」
・・・自分達お互いがよく生きようとする希望、お互いに信頼してはっきりと生きて行こうという希望、新しい文学の明るい面、ナンセンスではない明るさ、馬鹿笑いでない高笑い、愉快な足どり、一つの希望に結びつけて来る努力、その努力を尊重する気持、前進する気持・・・ 宮本百合子 「婦人の創造力」
出典:青空文庫