・・・ 二三軒隣では、人品骨柄、天晴、黒縮緬の羽織でも着せたいのが、悲愴なる声を揚げて、殆ど歎願に及ぶ。「どうぞ、お試し下さい、ねえ、是非一回御試験が仰ぎたい。口中に熱あり、歯の浮く御仁、歯齦の弛んだお人、お立合の中に、もしや万一です。口・・・ 泉鏡花 「露肆」
・・・ ところが政元は病気を時したので、この前の病気の時、政元一家の内うちうちの人だけで相談して、阿波の守護細川慈雲院の孫、細川讃岐守之勝の子息が器量骨柄も宜しいというので、摂州の守護代薬師寺与一を使者にして養子にする契約をしたのであった。・・・ 幸田露伴 「魔法修行者」
・・・まずしい身なりをしていても、さすがに人品骨柄いやしからず、こいつただものでない、などというのは、あれは講談で、第二国民兵の服装をしているからには、まさしくそのとおり第二国民兵であって、そこが軍律の有難いところで、いやしくも上官に向って高ぶる・・・ 太宰治 「鉄面皮」
出典:青空文庫