・・・ 文明と文化との相互的な関係は実に骨肉的であるし、おどろくべく複雑だと思う。婦人の生活、婦人の文化的な創造力の消長というようなものも、基本はここに根ざして、深刻多面な姿を示している。 過去の長い人類文化の歴史のなかで、婦人の創造力が・・・ 宮本百合子 「婦人の文化的な創造力」
・・・ヨーロッパにくらべると二十年余もおくれてイデオロギー的に大衆化するや直に複雑多岐な暴力にさらされなければならなくなった日本の若いマルクス主義の活動家たちと、転向の問題とは骨肉的な関係で結ばれていると思う。運動が合法的擡頭をした時代に階級的移・・・ 宮本百合子 「冬を越す蕾」
・・・ 実際に労働して来たもの、人につかわれて来たものには、資本主義のもとでの搾取労働、奴隷のような労働と、ソヴェト政権のもとで社会主義の方法で組織された労働との違いは、骨肉にしみてわからずにはいられない。 そのねうちがわかれば、どんなに・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・批評家にとってそこから自身の骨肉をわけて来た筈のその精神が、そんなに邪魔っけで憎らしい荷物に思われるように成ったというのは誰の目にもただごとではあり得ない。 当時より更に数年前にさかのぼってプロレタリア文学時代を顧みると、この時代には、・・・ 宮本百合子 「文学精神と批判精神」
・・・戦災者・復員者たちは、日を経るにつれて骨肉を噛む生活破壊の苦痛を味っている。 男女の学生は、せめて一日も早く教科書をもって、空腹でなく勉強したいと切望している。 日本じゅうの農村に、様々の形で、自主的な農民の組織が出来て、粒々辛苦の・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・わが骨肉の老朽を自ら感じる者等は活力に溢れ、日々の冒険で世界を拡張させて行く者共に、絶大な期待と信任を覚えたに違いない。彼等は一つ一つに新たな発見をすることが如何程、自分等皆の生活に重大な意義を持っているか、複雑な近代人の持ち得る以上の直覚・・・ 宮本百合子 「われを省みる」
出典:青空文庫