・・・政治的に諷刺を具体化する境遇におかれていない鬱屈をそのようにあらわした。十八世紀のイギリスで、当時の上・中流社会人のしかつめらしい紳士淑女気質への嘲笑、旧き権威とその偽善への挑戦として、スウィフトの「ガリバア旅行記」が書かれた。その国で、諷・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・私たちの頃は、自然が体も心も多彩にひろがろう、触れよう、知ろうという欲望に燃え立たせているのに、周囲の習慣はなかなかそれだけのびのびしていなくて、いつも鬱屈するものがあった。今のひとは、いざとなると同じ埒で阻まれながら、表面の浅い日常では一・・・ 宮本百合子 「青春」
・・・または、芭蕉の芸術家としての生きかたは、当時の時代的環境によって、鬱屈的であり、浪々的、捨て身すぎて、今日の作家生活の実際にふさわしくないからでもあろうか。 万葉の芸術家たちの心を、私は自分の粗雑な理解ながら親しみぶかく感じて読んで来た・・・ 宮本百合子 「文学における今日の日本的なるもの」
・・・複雑な政党関係などがあって、祖父が一向きな心で開墾を思っているように単純にことが運ばず、事業そのものは遂げられたが、祖父の心には或る鬱屈するものがあったらしい。晩年起居を不自由にする原因となった暴飲がこの間に始ったそうである。もともと政恒は・・・ 宮本百合子 「明治のランプ」
出典:青空文庫