・・・野原ぜんたいに誰か魔術でもかけているか、そうでなければ昔からの云い伝え通り、ひるには何もない野原のまんなかに不思議に楽しいポラーノの広場ができるのか、わたくしは却ってひるの間役所で標本に札をつけたり書類を所長のところへ持って行ったりしていた・・・ 宮沢賢治 「ポラーノの広場」
・・・と弱気な、非闘争的なダラ幹魔術にかかっているような述懐をもらしたかと思うと、忽然として次の行では作者はそのチャーリーに「収入が減ったって、だがそれ以上のものがあるんだ」と意気込ませている。そしてつづけていっている。「今年の宣伝のためにはこの・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・日本にも、生活そのものの中から、「言葉の魔術」をふりきって、「詩のポーズ」をけとばして、うたわれて来る詩のできたことは、何とうれしいでしょう。 わたしは詩というものが書けないけれども、詩をこのみます。散文では、何かの間にはさまって数行し・・・ 宮本百合子 「鉛筆の詩人へ」
・・・人間が人間を生かし殺す力の媒介物たる金銭というものの魔術性をあらわにし、それが近代社会を支配する大怪物として蓄積されてゆく過程を明らかにして、人間性の勝利の実質、生産する者が生産を掌握することの自然さを示した社会科学者たちの業績と、それを実・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・の腕に魅せられた人々は、今猶上に引いた序文の言葉の魔術や、八方からの反撃にかかわらずジイドが飽くまで真理を追究しようとしている態度という架想に陥って、人類の文学の今日の多難な道の上にこの小冊子の著者が撒いている細菌の本質を観破せず、或は、観・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・という正に「言葉の魔術」を行い、平和のための行為までを犯罪めいたものと暗示すること自体、権力は自身の修身をもっていないということを痛切に感じさせる。〔一九五一年二月〕 宮本百合子 「修身」
・・・○彼は自己の生存の外的危険から最高の内的確実性を獲得し、苦悩は彼にとって所得となる、○彼の芸術における悪魔的な価値変革力、○運命に対する人間の勝利は、内面的魔術による外的存在の価値変革に外ならないという点から見れば 彼の生活は芸・・・ 宮本百合子 「ツワイク「三人の巨匠」」
・・・そして、愛するYが、時間と金とを魔術のように遣り繰る技能に、一段の研磨の功を顕しますように。〔一九二六年八月〕 宮本百合子 「長崎の印象」
・・・ 奈良から鹿のハガキ カーターの魔術を見に祖母をつれてゆかれる父 八月六日 九十五度 西村さん、 自分のヒステリー的傾向。 十日にかえる。自分辛く、顔を見るのが苦痛。うまく笑えず H、A、 西村、「二三度斯う・・・ 宮本百合子 「「伸子」創作メモ(二)」
・・・象徴を捕える異様な敏感、自己を内より押し出そうとする内的緊張、あらゆる物と心の奥に没入し得る強度の同情心、見たものを手の先からほとばしらせる魔術のような能力。――これが芸術創作における最も特殊な点である。 しかし、いわゆる創作が必ず右の・・・ 和辻哲郎 「創作の心理について」
出典:青空文庫