・・・私立大学の、予科にかよっているのだが、少し不良で、このあいだも麻雀賭博で警察にやっかいをかけた。あたしの結婚の相手は、ずいぶんまじめな、堅気の人だし、あとあと弟がそのお方に乱暴なことでも仕掛けたら、あたしは生きて居られない。「それは、お・・・ 太宰治 「花燭」
・・・ つとめ人らしい若いのが四人、麻雀をしている。ウイスキーソーダを飲みながら新聞を読んでいる中年の男が、二人。「まんなかのが。」Kは、山々の面を拭いてあるいている霧の流れを眺めながら、ゆっくり呟く。 ふりむいて、みると、いつのまに・・・ 太宰治 「秋風記」
・・・山の上の先輩たちは、どっと笑い、いや、笑うのはまだいいほうで、蹴落して知らぬふりして、マージャンの卓を囲んだりなどしているのである。 私たちがいくら声をからして言っても、所謂世の中は、半信半疑のものである。けれども、先輩の、あれは駄目だ・・・ 太宰治 「如是我聞」
・・・二晩も三晩も、家に帰らない事は、珍らしくなかった。麻雀賭博で、二度も警察に留置せられた。喧嘩して、衣服を血だらけにして帰宅する事も時々あった。節子の箪笥に目ぼしい着物がなくなったと見るや、こんどは母のこまごました装身具を片端から売払った。父・・・ 太宰治 「花火」
・・・ばくちです。麻雀賭博を学校の子供たちに教えてやっていたのです。たぶん、そんな事じゃないかと思っていました。ちょっと警察に行って来ます。(会釈(蹌踉僕も行く。だめ、だめ。あなたはもう、どだい、歩けやしませんよ。さ、行こう。・・・ 太宰治 「春の枯葉」
・・・ こういうふうに考えて来ると、俳句というものの修業が、決して花がるたやマージャンのごとき遊戯ではなくてより重大な精神的意義をもつものであるということがおぼろげながらもわかって来る。それと同時に作句ということが決してそう生やさしい仕事では・・・ 寺田寅彦 「俳句の精神」
・・・末次内務大臣は、大学専門学校等の周囲三百米から喫茶店、ビリヤード、マージャン等の店を撤廃するように命じ、従来の自由主義的な学生の取締方法を変更するべきことをすすめた。十二月二十四日の都下の諸新聞は、防共三首都の日本景気に氾濫したニュースと共・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・「この麻雀というの、こないだの蜂雀の真似じゃあないこと――そうだ、滑稽だな、澄子の麻雀とは振っている。一寸立ち見をしないこと」 私は、日本映画は嫌いなのだが、蜂雀を麻雀とこじつけた幼稚なおかしさや、澄子がどんなに真似をするのかという・・・ 宮本百合子 「茶色っぽい町」
・・・ 一二度麻雀に誘われて遊んだりしたことのある良人の幸治のことを云い、尚子は、「でも、私、ほんとにあなたはお偉いと思うわ」 丸い柔かいウエーヴのよく似合う顔立ちにいつわりのない色を浮かべて云った。「よくお仕事はお仕事と、いつも・・・ 宮本百合子 「二人いるとき」
出典:青空文庫