・・・ 彼は袋の底をさぐって、黒パンを一と切れ息子に出してやった。 弟は、小さい手袋に這入った自由のきかない手で、それを受取ろうとした。と、その時、リープスキーは、何か呻いて、パンを持ったまま雪の上に倒れてしまった。「パパ」「やら・・・ 黒島伝治 「橇」
・・・は、ブジョンヌイの第一騎兵隊の噂をきき、猟銃をかつぎ黒パンを入れた袋をかついで次から次へと集って来た。 広大なソヴェト同盟内の各地方ソヴェトは、南方でも、シベリアでも勇敢な農民パルチザンと赤衛軍との血でうちたてられたのであった。 一・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・――日本女は、婦人講習会員の間にかけて、黒パンをたべている。思いついて手提袋から、銀貨と白銅とを少し出した。それは日本のだ。 ――これは五カペイキにあたるの、それが十カペイキ、そっちのが二十カペイキ…… 手にとりあげて眺めながら、日・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
出典:青空文庫