・・・私『どうして君はまた、今日までそんな事を黙認していたのだ?』三浦『黙認していたのじゃない。僕は肯定してやっていたのだ。』私は三度意外な答に驚かされて、しばらくはただ茫然と彼の顔を見つめていると、三浦は少しも迫らない容子で、『それは勿論妻と妻・・・ 芥川竜之介 「開化の良人」
・・・「ほかならぬ宮本百合子だから、党も一種の例外として黙認しているのではないかと考えられる。」そういう特権の「立場にある宮本さんが」正論を云いきって、「いささかのうしろめたさも覚えぬらしい態度に、実は私はあきたらぬものであります」と云われている・・・ 宮本百合子 「孫悟空の雲」
・・・哲学ずきさえも、もし美しく化粧することを忘れない程度ならサロンの風変りな花形として黙認した。つまり、あらゆる婦人のための学問教養が「客間用」として授けられた訳なのだ。これは、プーシュキンの初期の作品にもよく描かれている。 ところが、皮肉・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・愛する――というのは、妥協し、寛容し、黙認し、許すことだ。が、民衆の無知を黙認し、その迷妄と妥協し、そのすべての卑屈さを寛容し、その野獣性を許すことが出来るかね? ニェクラーソフに溺れていたんじゃ何一つ出来ない。百姓は教えられなければいけな・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
出典:青空文庫