・・・もう口じゃまどろっこしい、眼の廻る様な奴を鼻梁にがんとくれて逃んだのよ。何もさ、そう怒るがものは無えんだ。巡的だってあの大きな図体じゃ、飯もうんと食うだろうし、女もほしかろう。「お前もか。己れもやっぱりお前と同じ先祖はアダムだよ」とか何とか・・・ 有島武郎 「かんかん虫」
・・・お前の鼻梁も中々美しいよ。可哀がって遣るから、もっと此方へおいで」といった。 レリヤはこういって顔を振り上げた。犬を誉めた詞の通りに、この娘も可哀い眼付をして、美しい鼻を持って居た。それだから春の日が喜んでその顔に接吻して、娘の頬が赤く・・・ 著:アンドレーエフレオニード・ニコラーエヴィチ 訳:森鴎外 「犬」
・・・鼻は立派で、大きくて、しかも優しく、鼻梁が軽く鷲の嘴のように中隆に曲っている。髭は無い。口は唇が狭く、渋い表情をしているが、それでも冷酷なようには見えない。歯は白く光っている。 己の鑑定では五十歳位に見える。 下宿には大きい庭があっ・・・ 著:ランドハンス 訳:森鴎外 「冬の王」
出典:青空文庫