・・・彼女等は下層インテリゲンチャで、新しい社会生活に対して闘争する勤労階級と日常接近する地位にあり、新しい社会への移行の時期に、どこでもソヴェトのために役員となったりして働いた。従って新しい社会を描くことも早かったのです。 革命前に於けるロ・・・ 宮本百合子 「婦人作家の「不振」とその社会的原因」
・・・そして、父を呼び、二三日のうちに、行き度い意向を告げた。彼の心持で云えば、一寸客間で話しでもして帰る積りであったのだろう。けれども、林町では、折角来られたものだから、せめて夕餐でも一緒にしたい。それには、自分の腹工合が悪いのをなおしてから。・・・ 宮本百合子 「二つの家を繋ぐ回想」
・・・ 私たちの切に知りたいのは、性格にそのような動揺する暗さ明るさをもったインテリゲンチアの一団がその青年期のあるときにいろいろの矛盾を背負ったまま階級的移行をしたのは、歴史的にどのような必然によるものであったのか。そして、それから十年にわ・・・ 宮本百合子 「冬を越す蕾」
・・・彼はその能動性によってインテリゲンチアの生活から勤労階級に移行して来た階級人であり、将来の発展性をもその点にしっかりと持っている作家であると信じて誤りはないと思う。 しかしながら、一方彼にはその出生や成長した環境及び遭遇した青年期におけ・・・ 宮本百合子 「文学における古いもの・新しいもの」
・・・ 農奴解放、それに引続く資本主義の発達に伴い、この時代ロシアには偽瞞的な自由を獲得した稍々富める農奴から転じた無学な小市民層と、主人と住家耕地を失って都会、工業地帯に移行する農奴出身の労働者層とが急速に増大した。当時からロシアの主要工業・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・六十四歳のゴーリキイは、その永い闘いと動揺の後、旧インテリゲンツィアという社会的集団とともに、階級から階級へ移行した。ソヴェトの建設、生活の現実をつらぬいてゴーリキイの個人主義的な理想主義は社会主義的世界観に高められた。ゴーリキイはソヴェト・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」
・・・ 総選挙が迫ったこの頃、連合国司令部に、その結果によっては議会の再解散する意嚮があること、対日理事会として、当選議員の資格審査も行われるだろうと云われているのは、肯ける。国際的な注目は、今度の総選挙の日本の民主化に対する危険性を見ぬいて・・・ 宮本百合子 「矛盾とその害毒」
・・・人生の或る深刻な危機、モメントとして、それだけのことは諒解されるとして、そのひとが、その主観に立って、進歩的世界観に立脚する新たな恋愛論として、移行論或は清算論めいたものを主張することは、はたして当を得ているであろうか。健康な、十分の社会性・・・ 宮本百合子 「もう少しの親切を」
・・・ 譲原さんの遺稿として新日本文学に「朝鮮やき」がのっている。みじかい作品だけれども感銘がふかい。北海道の鉱山に働きながら朝鮮の独立運動のために闘っていた一家を中心としてかかれている物語りである。緊密によくかかれている。そして最後は敗戦後・・・ 宮本百合子 「譲原昌子さんについて」
・・・作家はいつの時代にでも、一つの段階からより成長した段階への移行に時間がかかる。作家にとってその成長のひとまたぎは、どんなにささやかなものであるにしても、つねに血肉をもって生きられたひとまたぎでなければならなかった。しかし、理論家にとっては一・・・ 宮本百合子 「両輪」
出典:青空文庫