・・・最も肉体的表情であって翻訳を必要としないスポーツで日本は世界の最前列に伍していることや、所謂躍進日本の他の一面としての文化紹介を欲する政府当局の意嚮などが、外務省文化事業部へ反響して、先ず国際文化振興会が半官的な組織で成立し、つづいて島崎藤・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・インテリゲンチアの労働者の側への移行は、プロレタリア文化建設の可能性とともに世界的な動かすことのできない事実であり、必然の勢であるにもかかわらず、昨今の文化政策は非常に巧妙な手段でインテリゲンチアをふくむ小ブルジョア層にますます小ブルジョア・・・ 宮本百合子 「今日の文化の諸問題」
・・・其は彼の作に漲っている深い力強い意向を考えれば解るのだろうと思う。彼の空想の豊饒さの裡には、蒼ざめた果敢なさや、愚痴や只甘い歎息は左様ならを云われている。 Lord Dunsany に次で、現今米国の知識階級に悦ばれているのは、Jo・・・ 宮本百合子 「最近悦ばれているものから」
・・・其等の欠点を反省して、より純真な、より高い価値を持った動機に依って、常套打破を試みようとする意向と努力とが含まれて居れば、私も、Unconvention の持つ常套に対する反抗を認めますでしょう。然し、此の一群の人々は、此の標語を振りかざし・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・のスローガンの社会的実践によって導き出されて来た新しい労働者農民作家群の輩出、社会主義建設がすすむにつれて顕著なインテリゲンチア作家の階級的移行、有能な新幹部の多種多彩な文学的活動と、より広汎な人民層のプロレタリア化の可能性を、より高い見地・・・ 宮本百合子 「社会主義リアリズムの問題について」
・・・留守で人の居ない庭へ面してあけ放たれている さっぱりした日本間。衣桁の形や椅子の脚が、逆光線で薄やみの中に黒く見える。つめたいさむさ。土の冷えが来るような 庭のしめり。○西日のよくあたる梢の上かわだけ紅葉しているもみじ。○すっかり黄・・・ 宮本百合子 「情景(秋)」
・・・ 谷崎潤一郎がこの作品に触れての感想で、自分も年を取ったせいか描写でゆく方法が億劫になって来たという意味の言葉を洩し、創作態度としての物語への移行が、作家としての真の発展を意味しないことを言外にこめている。当の作者がそのような自覚に立っ・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・完成、生き生きとした芸術的形象というものは、その作品が芸術的感銘を与えるために必須な条件と見られてはいるが、翌年この理論の発展として云われた新しいリアリズムの提議では、新しいリアリズムの本質を十九世紀以降の個人主義に立つリアリズムと異った社・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・ ひるがえって日本の明治以降をみると、さきにふれたように、自由民権時代の末期に集会結社法で婦人の政談傍聴を禁止されてから、更に明治三十三年エレン・ケイが「児童の世紀」を書いた年、治安警察法第五条によって、女子の政治運動が禁止された。・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
・・・ここで一本の道の上というのは、一から二への直接の移行という意味ではない。それぞれの人の人生に向う態度の発展を語る一貫性の一内容として自覚され行為さるべきであろうという意味である。 問題はここまで来て、新しい障害に出会うと思う。何故ならば・・・ 宮本百合子 「成長意慾としての恋愛」
出典:青空文庫