・・・それは或る気温の関係で太陽の周囲に白虹が出来、なお太陽を中心として十字形の虹が現われるのだが、その交叉点が殊に光度を増すので、真の太陽の周囲四ヶ所に光体に似たものを現わす現象で、北極圏内には屡見られるのだがこの辺では珍らしいことだといって聞・・・ 有島武郎 「北海道に就いての印象」
大阪は「だす」であり、京都は「どす」である。大阪から京都へ行く途中、山崎あたりへ来ると、急に気温が下って、ああ京都へはいったんだなと感ずるという意味の谷崎潤一郎氏の文章を、どこかで読んだことがあるが、大阪の「DAS」が京都・・・ 織田作之助 「大阪の可能性」
・・・天気、晴。気温、上昇。雲形、層、層積、巻層、巻積。よし。それで自分は小高い山の上にある長野の測候所を出た。善光寺から七八町向うの質屋の壁は白く日をうけた。庭の内も今は草木の盛な時で、柱に倚凭って眺めると、新緑の香に圧されるような心地がする。・・・ 島崎藤村 「朝飯」
・・・そうして普通の上空気温低下率から計算しても約摂氏五度ほどの気温降下を経験する。それで乗客の感覚の上では、恰度かなりな不連続線の通過に遭遇したと同等な効果になるわけである。しかし、乗客はみな、そんな面倒なことなどは考えないで「ああ涼しい」とい・・・ 寺田寅彦 「浅間山麓より」
・・・これを見ることによってわれわれは百度の気温と強烈な体臭を想像する。この際蠅はエキストラでなくてスターである。しかし監督の意図など無視して登場し活躍しているからおもしろい。 蛮人の王城らしい建物が映写される。この建物はきわめて原始的である・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・夕なぎに対して朝なぎもあるが、特に夕なぎの有名なのはそれが気温の高い時刻であるがためであろう。 夕なぎの継続時間の長短はいろいろな事情にもよるが海岸からの距離がおもな因子になる。すなわち海岸から遠くなるほどなぎが長くなるわけである。・・・ 寺田寅彦 「海陸風と夕なぎ」
・・・ まず、最も簡単な例を取って気温と人間の感覚との関係を考えてみる。他の気象要素の条件が全部同一であるとしても、人のある瞬間の感覚は単にその瞬間の気温だけでは決定しない。その温度が上がりつつあるか下がりつつあるか、いかなる速度で上がりまた・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・ われわれの言語を言語として識別させるに必要な要素としての母音や子音の差別目標となるものは、主として振動数の著しく大きい倍音、あるいは基音とはほとんど無関係ないわゆる形成音のようなものである。それで考え方によっては、それらの音をそれぞれ・・・ 寺田寅彦 「疑問と空想」
・・・遺憾ながらそのシガーの大きさや重量や当日の気温湿度気圧等の記載がない。この競技は速度最小という消極的なレコードをねらうところに一種特別の興味がある。できるだけのろく燃えるという事と、燃えない、すなわち消火するという事とは本質的にちがうのであ・・・ 寺田寅彦 「記録狂時代」
・・・また船が進水した時に気温と水温との差違のために意外な応力を生じる。これも以前には誰も詳しく研究したものがなかったのを末広君が初めて正当な解釈を与えた。また陸上では起らぬようなタービンの故障が舶用タービンでしばしば起るのはタービン・ディスクの・・・ 寺田寅彦 「工学博士末広恭二君」
出典:青空文庫