・・・何をしているところかと思ってみれば、それは、結婚記念に指紋をとる、という世界にもめずらしい行事をおこなっているところなのだった。『サン』のカメラは、ぬけめなく国内国外の目新しい写真をあさっているわけだが、この福島県のある村の人たちが、結婚式・・・ 宮本百合子 「指紋」
・・・それは全く感動に堪えない一つの行事であった。今でも本を買う特別な親愛の心はやはり微かな亢奮をふくんでいて独特な味いである。 今十六七歳の少女は、どんな心持で本というものを見て感じているのだろうか。この間もある大きな新刊書を売る店で、その・・・ 宮本百合子 「祖父の書斎」
〔大正三年予定行事〕 一月、「蘆笛」、「千世子」完成〔一月行事予記〕「蘆笛」、「千世子」完成 To a sky-Lark 訳、「猟人日記」、「希臘神話」熟読「錦木」一月一日晴 寒〔摘要〕四方拝出席・・・ 宮本百合子 「日記」
・・・これらの見解の中心点は、恋愛にしろ結婚にしろロマンティックな花飾で飾られたこれらの人間行事は、窮極のところ人間の生物的な種の保存という自然の目的に従ったものであるに過ぎないというところにある。女性は、あらゆる時代を通じてこの「生の力」の盲目・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」
・・・ 第一、今度の総選挙は、日本の民主化のための重大な国民の行事であった。そのために、四月十日は休日になった。それほど大切な投票であるのに、全国で十四万人余の選挙人名簿記載洩れが生じた。新聞は、婦人参政権のために、殆ど一生を費して来た市川房・・・ 宮本百合子 「春遠し」
・・・ と勘次の母が顔を曇らせて云いかけると、安次は行司が軍扇を引くときのような恰好で、「心臓や、医者がお前、もう持たんと云いさらしてさ。」「どうしてまたそんなになったんやぞ?」「酒桶から落ってのう。亀山で奉公して十五円貰うてたの・・・ 横光利一 「南北」
出典:青空文庫