・・・ 湖畔の平地に三、四の草屋がある。中に水に臨んだ一小廬を湖月亭という。求むる人には席を貸すのだ。三人は東金より買い来たれる菓子果物など取り広げて湖面をながめつつ裏なく語らうのである。 七十ばかりな主の翁は若き男女のために、自分がこの・・・ 伊藤左千夫 「春の潮」
・・・それでおかあさんは、すぐそこには人が集まって、聖ヨハネ祭の草屋を作るために、その葉を採っているのだと気がつきました。しかしてそこには水があると見こみをつけてそっちに行ってみました。 途中には生けがきに取りめぐらされて白い門のある小さな住・・・ 著:ストリンドベリアウグスト 訳:有島武郎 「真夏の夢」
・・・ひた土に筵しきて、つねに机すゑおくちひさき伏屋のうちに、竹生いでて長うのびたりけるをそのままにしおきて壁くぐる竹に肩する窓のうちみじろくたびにかれもえだ振る膝いるるばかりもあらぬ草屋を竹にとられて身をすぼめをり・・・ 正岡子規 「曙覧の歌」
・・・ 土神の棲んでいる所は小さな競馬場ぐらいある、冷たい湿地で苔やからくさやみじかい蘆などが生えていましたが又所々にはあざみやせいの低いひどくねじれた楊などもありました。 水がじめじめしてその表面にはあちこち赤い鉄の渋・・・ 宮沢賢治 「土神ときつね」
出典:青空文庫