・・・それと同時に、その歴史の必然性、その原理はもうとっくにわかっているのだから、くりかえして論ずるのはもう結構だ。なにか見せてくれ。なにか新しいものを啓示して、新しい情熱をふき入れてくれ。そういう他力本願の心理的要求が瀰漫している。 より年・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・十四回の講義で、「軍事問題におけるマルクス・レーニン主義の根本原理」「軍事の出版問題について」の説明をやる。六十二名の作家が動員された。 この講習の期間に作家聴講生は、二つの壁新聞を発行し、ほかに有益な軍事遊戯を思いついた。軍時に、ソヴ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・その席では、二十世紀のこの時期に動いている世界社会の苦悩、相剋、発展へのつよい意欲とその実験にかかわる文学の、原理的な諸問題について究明される態度は全く消された。印象批評と放談のうちに、ジャーナリズムと読者とに対するある種のデモンストレーシ・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・のなかに生きつつ、他の多くの例に見るように、それへの内面的抵抗を、歪んでも自分で歪みの見えない主観のなかに立てこもることで、即ち評論から随想へ転落する方便に求めていず、刻々の生きた動を執拗に文学の原理的な問題に引きよせて理論的に追究しようと・・・ 宮本百合子 「作家に語りかける言葉」
・・・大学にいる間、秀麿はこの期にはこれこれの講義を聴くと云うことを、精しく子爵の所へ知らせてよこしたが、その中にはイタリア復興時代だとか、宗教革新の起原だとか云うような、歴史その物の講義と、史的研究の原理と云うような、抽象的な史学の講義とがある・・・ 森鴎外 「かのように」
・・・ 自分は茲では文学的表示としての新しき感覚活動が、文化形式との関係に於ていかに原則的な必然的関連を獲得し、いかに運命的剰余となって新しく文学を価置づけるべきかと云うことについて論じ、併せてそれが個性原理としてどうして世界観念へ同等化し、ど・・・ 横光利一 「新感覚論」
・・・通った論文も、アインシュタインの相対性原理の間違いを指摘したものだと云ってましたがね。」 異才の弟子の能力に高田も謙遜した表情で、誇張を避けようと努めている苦心を梶は感じ、先ずそこに信用が置かれた気持良い一日となって来た。「ときどき・・・ 横光利一 「微笑」
・・・これが軍法の原理なのである。そういう着眼であるから、信玄の一代記にしても、戦国武士の言行録にしても、道徳的訓戒としての色彩が非常に濃い。 ここにはその一例として、「命期の巻」にある「我国をほろぼし我家をやぶる大将」の四類型をあげてみよう・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
・・・を生活原理とする以上は、味わう能力の貧弱は畢竟人としての貧弱である。が、総じて一つの類型たり得るためには、彼は人として豊富でなくてはならぬ。すなわち享楽人はその享楽において広汎かつ強大な能力を持たなくてはならぬ。 享楽の対象は自然と人生・・・ 和辻哲郎 「享楽人」
・・・形而上学でも倫理学でも宗教学でもすべて先生の独特な原理で一貫している。僕たちはその講義を聞いて来たのだ。よく解ったとはいえないけれども、よほど素晴らしいもののように思う。しかし自分たちが敬服したのは、その哲学よりも一層その人物に対してである・・・ 和辻哲郎 「初めて西田幾多郎の名を聞いたころ」
出典:青空文庫