・・・これは、ルイスなどに対して使われたが、これまでの日本にはなかった新しい権力行使の方法である。 七月五日になって、夕方のラジオは意外なニュースをつたえた。下山国鉄総裁の行方不明事件が告げられた。そして、六日午前五時すぎ、小菅刑務所のわきの・・・ 宮本百合子 「「推理小説」」
・・・ 十六、七日。皇子と乞食。 十九――二十一日。アンクル・トムの小舎。 観衆の年齢に応じて、脚本の内容はだんだん複雑になって来ている。それより日本女を羨ましがらせたのは、その下の「五月二十九日からの切符配分」という表だ。レーニング・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・ ソヴェト・ロシアにおいては、さっき三階の、ローザ・ルクセンブルグの肖像画のかかった室で、婦人党員が説明したように、実践をとおして獲得した女の公民権を十分に行使する者の率が年々素晴らしく増して来た。たとえば農村においてさえ、ソヴェト選挙・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・「こっちは光子さん」 自分の肖像 対照 大掃除 サイドボードを動かす 上の下らぬ大額をおろす。買い手が見つけられるから。「あれを買うって?」「本当?」「本当!」「へーえ、あれお父様ただ貰ったんだろう?・・・ 宮本百合子 「生活の様式」
・・・ジダーノフの報告には、それらの雑誌の編輯者が、「友誼上」公私混同したと表現されている。ジダーノフは二つの雑誌の編輯者が、苦しまぎれにした弁明を、いちおうまともに受けてやっているのだとしか思われない。なぜならこのごろ、日本のような稚い民主社会・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・ 退屈な時にペンペン草の満ちた牧場に座って小牛の柔かな体を抱えながらこの子の話をきくのは愉快な事の一つだ。 小さいくせになれて居るので牛の鳴声をききわけてききもしない私に、ほら又鳴いた。枯草呉れろってな。なんかと得意・・・ 宮本百合子 「旅へ出て」
ツワイクの「三人の巨匠」p.150○ワイルドがその中で鉱滓となってしまった熱の中でドストイェフスキーは輝く硬度宝石に形づくられた。○災厄の変化者、あらゆる屈辱の価値の変革者としてのドストイェフスキー。○彼は自己・・・ 宮本百合子 「ツワイク「三人の巨匠」」
・・・このひとには「小公子」の名訳がある。おじいさんの巖本善治は、明治初期の進歩的女子教育家であった。おかあさんは、多分アメリカの婦人だったように思う。二十三歳の才能ゆたかなヴァイオリニストは、世界の舞台に立つことを、どんなに、真剣に、まじめに、・・・ 宮本百合子 「手づくりながら」
・・・八月、岩手、秋田地方へ朝日主催の自由大学講師として宮本と二人で出席した。九月、四国地方の党会議に出席をかねて旅行した。この年は文化、生産の各場面に民主化のための闘争が起って、十月から十二月のはじめまで、もっとも高い波であった。年・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・逆立ちの公私。私たちの建設。“どう考えるか”について。六月。信義について。七月。ある回想から。播州平野。八月。青田は果なし。九月。風知草。十月。琴平。現代の主題。風知草。十一月。郵便切手。図書館。風知草。単行本。・・・ 宮本百合子 「年譜」
出典:青空文庫