・・・そこでは、矛盾の諸相も現実のものとしておそれられていない。島木健作氏の「生活の探求」に向けられて行った時代のやや素朴であった一般の人生的な良心も、その点では今日の現実によって成長させられていると思われるのである。 あの作品は、今日に到る・・・ 宮本百合子 「生産文学の問題」
・・・という論文のほか、平田次三郎「島木健作論」、北鬼助「平林たい子論」、中川隆一「丹羽文雄論」などがのりました。三つの論文はけっしてながいものではありません。また、堂々たる大評論でもないけれど、この三つの論文を『新日本文学』がのせることのできた・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・ 今日の社会の事情の裡で、小説にしろ、どういう題材、どういう主題がどの程度にかき得るかということについては、常識が鋭敏にされて来ている。島木健作氏の小説「再建」の作品についての感想はここでのべず、それが発売を禁止されたことは、一般的な問・・・ 宮本百合子 「近頃の話題」
・・・ 作者は素直に、ただ一筋に梅毒の悲惨にひしがれた女を描いて或る効果を示しているが、この社会的疾病に対する考えかた、感情は、どちらかと云えばごく低いものである。 島木健作の「癩」「盲目」などが好評を博したことによって、もし疾病、不具な・・・ 宮本百合子 「入選小説「毒」について」
・・・ 島木健作氏の「癩」「盲目」その他の作品が広く読まれた事情には、これまで述べて来た幾つかの客観的なまた主観的な条件の然らしめたものがあった。「癩」「盲目」等では、やはり人間の肉体的なるものが主となって特殊な事情の綾の中で描かれているもの・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムへの道」
・・・同じような点に、島木健作氏もふれている。島木氏は、今日の作家のそのような姿こそ、そのままで却って積極的なものを語る場合がないとは云えないと云っている。唐人お吉が自分の惨めな生存そのもので当時の社会に抗議しているように、作家の惨めな姿そのもの・・・ 宮本百合子 「文学における今日の日本的なるもの」
・・・ 島木健作氏の諸作を読んで、私は非常に多くのことを感じ、そのある作からはほとんど苦しいほどの激情を喚び醒まされたのである。その感銘から引出された重大なある疑問についてはここにふれず、「風雲」との連関で思い浮ぶただ一つは、島木氏のように新・・・ 宮本百合子 「文学における古いもの・新しいもの」
出典:青空文庫