・・・贅沢をして暮すことなんかできない人々は、日頃贅沢をしてそれが自分たち人種の優越のしるしででもあるかのように振舞っていた人々が今度の禁止で、バカ贅沢ができなくなったことに一味の清涼を感じたのであった。 若い女のひと、まじめに働いている若い・・・ 宮本百合子 「その先の問題」
・・・を描き、一九一四年にいたる時代を描こうとしている作者ロジェ・マルタン・デュ・ガールの人生態度の慎重さ、誠実さ、文学作品としての完成度のほんもの工合が、特に解毒剤のような清涼さで読者の感情にふれて来るというのは、その反面に何を語っているのであ・・・ 宮本百合子 「次が待たれるおくりもの」
・・・そこに渦巻き展開される色彩のつよい労働、河の面を風にのって流れる荒っぽい、だが声量の豊かな俗謡。目的は何であるにせよ、たといそれが浪費であるにせよ、そこにはゴーリキイをよろこばせ、自身の生命の力をも鮮やかに感覚させる、むき出しな人間の肉体の・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・しかし私達はその一匙の氷の中にいつかあった様な殺人甘味が入れられているとしたら、一匙の氷は、時にとっての清涼剤だとして安心していられるでしょうか。毎月見る婦人雑誌が、ただただシャボンの泡のきらめきの様なものだということに大した罪はないようだ・・・ 宮本百合子 「若人の要求」
出典:青空文庫