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・・・ところがその磚がひどくぞんざいに、疎に積んであって、十ばかりも卸してしまえば、窓が開きそうだ。小川君は磚を卸し始めた。その時物音がぴったりと息んだそうだ。」 小川は諦念めて飲んでいる。平山は次第に熱心に傾聴している。上さんは油断なく酒を・・・
森鴎外
「鼠坂」
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・・・ ドイツ語である。ぞんざいなことばと不吊合いに、傘を左の手に持ちかえて、おうように手袋に包んだ右の手の指さきをさしのべた。渡辺は、女が給仕の前で芝居をするなと思いながら、丁寧にその指さきをつまんだ。そして給仕にこういった。「食事のい・・・
森鴎外
「普請中」